特集 3-2 自動運転を支える車載イーサネットの機能安全とQoS実現技術

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Vol.107 No.11 (2024/11) 目次へ

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枠

3. 通信技術

特集

     3-2

自動運転を支える車載イーサネットの機能安全とQoS実現技術

Functional Safety and QoS Technologies for Automotive Ethernet Supporting Autonomous Car

山﨑康広

区切り

山﨑康広 正員:シニア会員 一般社団法人JASPAR

Yasuhiro YAMASAKI, Senior Member (Japan Automotive Software Platform and Architecture, Tokyo, 108-0075 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.107 No.11 pp.1029-1035 2024年11月

©2024 電子情報通信学会

abstract

 近年の自動車開発ではCASE(Connected, Autonomous, Shared, Electric)やSDV(Software Defined Vehicle)という考え方が出てきた.これらの実現には情報処理系,特に通信が重要となる.従来の車載通信はCAN(Controller Area Network)が中心であったが,CASEやSDVで要求されるような大容量通信やクラウドとのシームレス通信は実現できない.このような背景の下,車載イーサネットが着目されている.しかしイーサネットは元来ベストエフォート形サービスでありそのままでは車載用途としては十分な品質とならない.本稿では車載でイーサネットを適用するための安全担保の考え方(機能安全)と通信品質保証技術(QoS制御)について紹介する.

キーワード:機能安全,車載イーサネット,AUTOSAR E2E,QoS

1.は じ め に

 近年の自動車開発は,“CASE(Connected, Autonomous, Shared, Electric)”と呼ばれる新しい領域が重要となっている.またSDV(Software Defined Vehicle)という新たな考え方も出てきた.これらの実現には多数のセンサ情報を集めて運転支援を行う高度運転支援システム(ADAS: Advanced Driving Assistant System),車の情報をクラウドに集めビッグデータ解析を実施するコネクティッドシステム,市場に出た後の車の機能アップを行うOTA(Over The Air)リプログラミングなどの情報処理系,特に通信が重要となる.

 従来の車載通信はBOSCH社が車載用途で開発したCAN(Controller Area Network)が主に利用されてきた.しかしCANは車載に特化した方式で通信速度も最大でも数Mbit/s程度であり,CASEやSDVで要求されるようなクラウドとのシームレスな接続や大容量通信を実現できない.

 このような背景の下に車載通信の新しいプロトコルとして車載イーサネットが注目を浴びている.車載イーサネットは一般用途のイーサネットと同じプロトコルが利用でき,クラウドとシームレスに接続可能である.また通信速度も数Gbit/sまで規格が策定されており必要な大容量通信が可能である.

 しかしながらイーサネットはベストエフォート形のサービスが中心であり車載用途では十分な品質とならない.このため車載イーサネットは既存のイーサネットの技術をベースにしつつ車載通信の特性を考慮して車載特有のプロトコルを採用している(表1).特に自動運転は複数ECU(Electronic Control Unit)から情報を集めて「走る・曲がる・止まる」の重要通信を取り扱うため,安全担保の考え方,通信品質保証,ECU間の時刻同期が必要となる.

表1 車載イーサネットのプロトコルと各レイヤの特徴

 本稿では車載イーサネット特有の考え方・プロトコルの中で通信の安全安心に関わる機能安全(プロトコル:AUTOSAR E2E)と品質制御(Ethernet AVB/TSN)について紹介する.


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