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4. センサ技術
4-1
車載MEMSの最前線
State-of-the-art MEMS for Automotive
MEMSの最初の大きな産業応用は,自動車のエアバックセンシングだった.それから,MEMSはアンチロックブレーキ制御,ロールオーバ制御,スピン防止,エンジン制御,ナビゲーション,ヘッドライト制御などと自動車に欠かせないものになっている.昨今,ADASと自動運転が重要になり,超高性能ジャイロやMEMSライダも求められるようになった.更にヘッドアップディスプレイ,スマートヘッドライト,ドライバ監視などにもMEMSの応用が広がる可能性がある.当然,これらは既存の自動車だけではなく,新しいモビリティにも使われていく.
キーワード:加速度センサ,ジャイロ,ライダ,マイクロミラーデバイス
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の最初の大きな産業応用は,自動車のエアバックセンサであった.これは衝突を検知する加速度センサの一種である.その後,MEMS加速度センサはアンチロックブレーキ制御,ロールオーバ制御,ナビゲーション,ヘッドライト制御,タイヤの振動計測などにも使われ,現代の自動車に欠かせないものとなっている.これと合わせてMEMSジャイロも自動車に使われており,スピン防止やナビゲーションにも役立っている.
今後,ADAS(Advanced Driver Assistance Systems)が進化し,より高度な自動運転が実用化するには,MEMSセンサにも高性能化が求められる.特にジャイロとライダ(LiDAR, Light Detection and Ranging)については,性能またはコストパフォーマンスが自動車メーカの要求に必ずしも追いついていない.本稿では,これら二つのMEMSセンサを取り上げて,最前線を解説する.また,MEMSライダに用いられるマイクロミラーデバイスの他の車載応用として,HUD(Head-up Display)とスマートヘッドライトにも言及する.
ジャイロはローエンドからハイエンドまで性能と価格に数桁にわたる幅を持つ.図1において左側がローエンド,右側がハイエンドであり,前者はMEMSジャイロ,後者はHRG(Hemispherical Resonator Gyro)やESG(Electrically-Suspended Gyro)である(1).ジャイロの性能は代表的にはバイアス安定性とARW(Angle Randum Walk)によって表され,これらが小さい程,小さな角速度を検出できる.
車載用MEMSジャイロのバイアス安定性は典型的には1°/hといったところであるが,自動運転には更に1桁以上の向上が必要だとされている.これは,自動車の位置の把握にはGPS信号が用いられるが,これが高層ビル群やトンネルで途絶える事態が想定され,その際,慣性航行が必要になるためである.
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