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5. 電子デバイス技術
5-1
SiCパワーデバイスにおける最近の研究開発
Recent Research and Development in SiC Power Devices
低炭素社会の実現にはエネルギーを効率的に使用する必要があり,家電製品から産業・鉄道車両用機器・自動車などで使用されるパワーエレクトロニクス機器の省エネ化が重要である.これらの機器に用いられるパワー半導体モジュールのキーパーツはパワー半導体デバイス(パワーデバイス)であり,更なる高効率化・小形化・高信頼性化が求められている.このニーズに応えるため,ワイドバンドギャップ半導体であるSiCパワーデバイスの加速的な普及が期待されている.本稿ではSiCパワーデバイスの研究開発における最新動向をまとめる.
キーワード:低炭素社会,パワーエレクトロニクス機器,パワーデバイス,SiC
低炭素社会の実現にはエネルギーを賢く有効利用する社会への転換が重要であり,国際電気標準化会議(IEC: International Electrotechnical Commission)が発行したIEC白書ではEnergy-Wise societyと名付けている(1).エネルギー利用の効率化には,家電製品から産業・鉄道車両用機器・自動車などに広く使用されるパワーエレクトロニクス機器の省エネ化が不可欠であり,パワー半導体モジュールに用いられるパワー半導体デバイス(パワーデバイス)の更なる高効率化・小形化・高信頼性化が求められる.従来,パワーデバイスの材料にはSiが用いられてきたが,近年では本用途においてSiよりも優れた材料物性を有するSiCやGaNなどのワイドバンドギャップ半導体(用語)を採用する動きが加速している.特にSiCはSiと比較して,絶縁破壊電界と熱伝導率が高く(2),高電圧領域において電力変換時の電力損を低減することが可能である.こうした利点から,SiCパワーデバイスは,600Vから3.3kVまでの幅広い耐圧クラスにおいて既に実用化されている.
SiCを用いた電界効果トランジスタ(MOSFET: Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)の動作について,基本構造の一つであるプレーナ形を例にとって説明する.図1にプレーナ形SiC-MOSFETの断面構造を示す.電流はドレーン電極,n形基板,n形ドリフト層,チャネル,n+形ソース,ソース電極の順に流れる.ここで,p形ウェルのゲート絶縁膜と接する部分はチャネルと呼ばれ,ゲート電圧の印加状態によって抵抗が大きく変化する.すなわち,MOSFETはゲート電圧によって素子抵抗を変化させることのできるデバイスである.ゲートをオン状態にすることによりMOSFETの抵抗は低くなるため,ドレーンからソースへ電流が流れる.一方,オフ状態にした際にはドリフト層が空乏化して高抵抗となるため電流は流れず,高電圧を保持することができる.
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