小特集 5. 24GHz帯を使用したWPT実現に向けた取組み

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実用化が迫る空間伝送方式ワイヤレス電力伝送システムの進展と展望

小特集 5.

24GHz帯を使用したWPT実現に向けた取組み

Initiatives to Realize Beam WPT Using the 24GHz Band

関野 昇

関野 昇 正員 電気興業株式会社R&D統括センター

Noboru SEKINO, Member (R&D Administration Center, DKK Co., Ltd., Kanuma-shi, 322-0014 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.107 No.12 pp.1146-1151 2024年12月

©2024 電子情報通信学会

Abstract

 空間伝送方式ワイヤレス電力伝送(WPT)システムでは,より大きい電力を伝送させ,他の無線システムへの干渉を低減し共存できる方式が望まれている.24GHz帯の準ミリ波帯を使用したWPTシステムでは,アンテナを小形化できることで,多素子化による大電力化が可能である.一方,伝搬損は大きいことから給電エリア外の無線システムへの干渉電力を低減できる周波数帯と期待される.そのため,大きな電力を比較的近距離への送電に適したものとされ,数ワットクラスの給電も実現することが可能なことから注目されている.この24GHz帯を使用したWPTシステムについては,制度化・実用化に向けて現在進めているところであり,本稿では24GHz帯を使用したWPTシステムの現状や取組みについて紹介する.

キーワード:ワイヤレス電力伝送,Beam WPT,準ミリ波帯,空間伝送方式WPT,標準化,制度化

1.は じ め に

 空間伝送方式WPTシステム(以下,WPTシステムとする.)について,国内では2022年に三つの周波数帯(920MHz帯,2.4GHz帯,5.7GHz帯)が制度化され,構内無線局とした位置付けで利用できる環境が整い,実用化が始まったところである.この制度では屋内の天井設置,閉空間(屋外または利用空間外には規定された壁損失による減衰量が必要)利用及び,電波防護指針による管理環境での利用(920MHz帯を除く)とされ,制限された利用範囲での制度化としてステップ1としている.

 これに対して24GHz帯を使用したWPTシステムは,ステップ1からの利用拡大としたステップ2の中で新たな利用周波数帯として制度化・実用化が進められている.では,なぜ既にあるWPTシステムに対して準ミリ波帯となる24GHz帯を追加するのかといったニーズやユースケース及び,24GHz帯での実用化に向けた研究開発の状況等について紹介する.

2.準ミリ波帯でのニーズ

 準ミリ波帯でWPTシステムを利用する大きなメリットは,使用するアンテナを小形化できることが挙げられる.より多くの電力を送電したいWPTシステムではあるが,一つの開口で高電力増幅器を使用した構成よりも,多数の素子に多くの電力を分散供給した送電装置の方が,放熱などの設計効率が良く小形化も比較的容易となる.また,後述するユースケース等での設置環境を考慮するとA4サイズ以下の送電装置が望ましいと考えられる.920MHz帯を除き,WPTシステムではビームフォーミング方式による複数素子によるアレー構成としており,5.7GHz帯では8×8配列による64素子を基準として,30cm角程度の大きさを想定している.一方,24GHz帯では,32×32配列の1,024素子で25cm角程度にて可能であり,5.7GHz帯の16倍の素子数であるが,ほぼ同程度の大きさとすることが可能である.また,これは受電側でも同様で複数の受信素子アンテナを配置することで,より高い電力を給電できることになる.


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