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実用化が迫る空間伝送方式ワイヤレス電力伝送システムの進展と展望
小特集 7.
無線電力伝送の高度化に向けた取組み
Initiatives towards Advancing Wireless Power Transmission
Abstract
空間伝送方式無線電力伝送(Wireless Power Transfer, WPT)は,配線不要で長距離かつ多数の機器への給電が可能であり,IoTセンサなどでの需要が高まっている.本研究では,WPTの高度化を目指し,給電効率と周波数利用効率の向上を図る.主なアプローチとして,メディアアクセス技術の開発,パケットベースの電力伝送手法,端末のグループ化並びにビームフォーミングによる給電手法,通信端末との干渉回避技術を提案し,一部シミュレーションと実験でその有効性を確認している.本稿では,それらの技術について概要を解説する.
キーワード:空間伝送方式無線電力伝送,メディアアクセス制御,パケットベース,ビームフォーミング
電波の送受信により電力を伝送する空間伝送方式無線電力伝送(WPT: Wireless Power Transfer)は,配線が不要で比較的長距離かつ多数の機器に給電が可能であることから,IoTセンサ等をはじめ給電無線化に向けた技術分野として需要が高まりつつある.2022年5月に電波法施行規則等が一部改正され,920MHz帯,2.4GHz帯,5.7GHz帯の3帯域が割り当てられ,屋内限定かつ送信出力等一定の制約の下で使用可能となった(1).一方,5Gの実用化に伴い高速・低遅延な無線通信技術を活用した多様なモバイル機器や,多数のIoT向けセンサ等が普及しつつあり,WPT技術についても現行システムより大容量化・多端末化を実現可能とする高度化方式の検討が必要である.
WPTに関するこれまでの研究では,電力を効率的に伝送するアンテナといった物理的なデバイス技術が中心であり(2),複数の端末へどのように給電量を分配するかといったスケジューリング及びアクセス制御については十分な議論がなされていないのが現状である.本稿では,WPTの高度化に向け,メディアアクセス技術を中心に給電効率並びに周波数利用効率の向上を目指すアプローチを幾つか紹介する.
無線電力伝送には,主に「電磁誘導方式」,「磁界共振結合方式」,「電界結合方式」,「空間伝送方式」の四つの方式があり,それぞれに独自の特徴がある(3).
電磁誘導方式は,コイルを介して磁界を結合することで電力を伝送する方式である.この方式は,回路構成が簡単で,小形かつ低コストで実現可能である.しかし,送電側と受電側の位置を正確に合わせる必要があり,伝送距離が数mmから数cmと短いことが課題である.最大90%程度の高い伝送効率を誇り,利用周波数は10kHzから数百kHzの範囲である.
磁界共振結合方式は,電磁誘導方式と基本原理は同じであるが,磁界共振現象を活用することで伝送距離を延長することができる.この方式は位置合わせに対する柔軟性が高く,若干の位置ずれが許容される.伝送距離は数十cmから数m程度と中距離での伝送が可能であり,伝送効率は40%から90%と条件により幅広く変動する.利用周波数は数十kHzから数十MHzの範囲で,情報端末や電気自動車などへの充電や給電に適している.
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