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小学校4年生の理科で乾電池のつなぎ方を学ぶ.そのときのキーワードは「電圧」と「電流」だ.その後,中学・高校の物理の授業ではレベルが上がるものの,依然として電圧と電流を基本として考えることに変わりはない.ところが,大学での授業になると事情が一転し波動の概念が登場する.そのとき電圧電流に代わって新しい基軸となる物理量が「パワーウェーブ」だ.この突然の発想転換に戸惑う学生がいる.またプロの技術者でもパワーウェーブを明確な意識を持たないまま使っていることがある.パワーウェーブとは一体全体どのようなものなのか,美しい数式演算と目に見える座標軸の回転技を組み合わせてパワーウェーブ物語への扉を開こう.
パワーウェーブを直訳すると電力波となる.これって何だか難解に聞こえる.少なくとも波と言うからには周期的に変動する電圧電流すなわち交流が現れるはずだ.交流理論では複素数が使われる.そうなるとまず複素数の復習から始めなくてはいけないのか….
大学課程においてもパワーウェーブは高周波工学あるいはマイクロ波工学という授業科目で学習する.そのため周波数がある程度以上高くないとパワーウェーブを記述できないのかと思い込みがちである.いや実はそうではない.パワーウェーブ理論の最も本質的な核心部分は「直流」で説明できるのだ.
それを可能にする最もシンプルな回路を図1に示す.乾電池のエネルギーで白熱ランプが光る.電池とランプを接続している二つの○印を端子,そして一対の端子の組をポートと呼ぶ.このポートにおいて電圧(ボルト)と電流(アンペア)を観測する.
物語はよく知られた電力の式とオームの法則
(1)
(2)
から出発する.ここで,はランプへ伝達される電力,はランプの抵抗値である.このは一定値ではない.なぜなら電流の強さによって白熱ランプのフィラメント温度が上昇し抵抗値が変わってしまうからである:文献(1)参照.言い換えると,電圧と電流が素直な比例関係にはならない.これを聞いてちょっと不安になるかもしれない.でも大丈夫,たとえそうであっても式(2)でを定義すること自体に変わりはない.
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