ニュース解説 世界初となる結晶格子面それぞれの磁界観察に成功――高機能材料や省エネデバイス実用化への道を開く計測技術――

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Vol.107 No.12 (2024/12) 目次へ

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◆今月のニュース解説

 世界初となる結晶格子面それぞれの磁界観察に成功

 ――高機能材料や省エネデバイス実用化への道を開く計測技術――

 World’s First Observation of Magnetic Fields of Individual Lattice Planes Achieved: Paving the Way for Practical Use of High-performance Materials and Energy-saving Devices

世界初となる結晶格子面それぞれの磁界観察に成功

――高機能材料や省エネデバイス実用化への道を開く計測技術――

 カーボンニュートラル社会を実現するために,脱炭素化技術,低消費電力化・低発熱化技術が求められている.これらの技術の開発には新物性の発見や物性の最適な組合せや制御が必要となる.物性は原子の配列とそれにより発生する電界や磁界が深く関係するため,電界や磁界を高い分解能で観察することができれば,物性におけるメカニズムの解明や不良解析が容易になり,新物性の発見や物性の最適な組合せや制御方法の発見につながる.電界や磁界の観測としては,電子波を用いた電子線ホログラフィーにより観測する方法がある(図1).電子波は試料内や試料周りの電界や磁界の影響によりその波面が変化するため,電子波の波面の変化(電子波位相)を電子線ホログラフィーにより計測することで,構造観察のみでは解析することが困難な電界や磁界を解析することができる.

図1 電子線ホログラフィーの原理  試料を透過した電子波と試料のない参照領域を通過した電子波を,バイプリズムにより検出器上で重畳させてホログラムと呼ばれる干渉じまを得る.

 試料を透過した電子波と参照波を特定の入射角で交差させてホログラムを形成するOff-axis電子線ホログラフィーは,平行な入射でホログラムを形成するIn-line電子線ホログラフィーや微分位相コントラスト法に比べ,微細な構造情報から大きな空間分布情報まで広い範囲の空間周波数情報を同時に得ることができ,電子波位相を解析するために用いられる一つの有用な手法である.このOff-axis電子線ホログラフィーにおいて究極的な分解能を実現するため,最先端研究開発支援プログラムの助成を受け2014年に収差補正器を搭載した加速電圧1.2MVの「原子分解能・ホログラフィー電子顕微鏡」が開発された.


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