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自動運転を支える情報技術の最新動向
小特集 4.
車載光ネットワークの最新動向
Latest Trends in In-vehicle Optical Networks
Abstract
高度自動運転の実現には,搭載するカメラやセンサ等の電子機器の増大に対応した大容量かつ低遅延な車載ネットワークが不可欠である.更には,耐環境性やEMC性能,信頼性などの車特有の極めて厳しい要求条件を達成する必要がある.そのため近年では,伝送媒体として電気ケーブルだけでなく光ファイバを利用する様々な高速車載通信規格が検討されている.本稿では,自動運転に適した車載ネットワーク構成の変革や車載通信規格の最新動向を概説するとともに,石英系光ファイバを利用した新たな車載光ネットワークの研究を紹介する.
キーワード:車載通信,車載ネットワーク,光通信,イーサネット,シリコンフォトニクス
自動車産業は,自動車のEV(Electric Vehicle)化と自動運転技術の導入が進む変革の時代にある.高度な自動運転機能を実現するには様々な技術開発が必要であるが,外部情報を収集するセンサ,情報処理と判断を行うHPC(High Performance Computer),大量の情報を低遅延に伝送する車載ネットワークの高性能化と低消費電力化が不可欠であることは言うまでもない.
車載通信の高速化を図1に示す(1),(2).エンジンやブレーキ制御をつかさどるCAN(Controller Area Network),ミラーやウィンドウ制御のLIN(Local Interconnect Network),映像配信のMOST(Media Oriented System Transport)などが実用化されて高速化が進んできた.また,民生イーサネットと比較して約20年遅れで車載イーサネットが開発,標準化されている.イーサネットが初期の同軸ケーブルを媒体とする規格から光ファイバを媒体とする規格に進歩したように,車載イーサネットにおいても大容量伝送に適する光ファイバの利用が検討されている.
車載通信への要求条件を表1に示す.100Gbit/sの伝送速度が必要になるのは,自動運転のためにカメラ,レーダ,ライダ等のセンサからの情報をHPCに伝送するからである.例えば,4Kカメラ出力の伝送速度は非圧縮で約12Gbit/sであり,レベル4以上の自動運転にはカメラ用だけでも100Gbit/s程度の伝送容量が必要である.(自動運転レベルに関しては,本小特集1「完全自動運転社会実現に向けた技術開発動向と課題」を御覧頂きたい.)エンジン制御などでは,100µs以下の低遅延特性が必要である.自動運転では,多数のECU(Electronic Control Unit)やシステムの同期が不可欠であり,遅延と帯域を管理し適時性が確保できるTSN(Time Sensitive Network)の実装も求められる.耐環境性に関しては,広い温度範囲で動作し,EMC(Electro Magnetic Compatibility)が実現されなければならない.更に,人の命を預かる自動運転では,車載通信には極めて高い信頼性が必要なことは言うまでもない.これらの課題を解決するために,車載通信に光ネットワーク技術を導入することが期待される.伝送速度,伝送距離,遅延時間,重量などの項目は光ネットワークを用いて比較的容易に達成できる目標であるが,耐環境性と信頼性を低コストに実現することは容易ではない.
本稿では,自動運転の実現に向けた車載ネットワークアーキテクチャの変革と様々な通信規格の最新動向について解説する.更に,石英系光ファイバを用いた車載光ネットワークの新たな試みについて概説する.
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