解説 機械学習を応用した無線信号からの通信環境推定

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 解説 

機械学習を応用した無線信号からの通信環境推定

Communication Environment Estimation from Spectrograms

by Applying Machine Learning

小島 駿

小島 駿 正員 東京大学生産技術研究所

Shun KOJIMA, Member (Institute of Industrial Science, The University of Tokyo, Tokyo, 153-8505 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.107 No.2 pp.150-154 2024年2月

©2024電子情報通信学会

A bstract

 高速・大容量通信の実現には,適応的な制御が必要不可欠であり,その制御のために通信環境情報の高速・正確な把握が要求される.通信性能に影響を与える要因として,SN比やドップラーシフト,ライス係数が挙げられるが,これらの複数の情報の推定にはばく大な計算量を要することに加え,参照信号が必要な点や大規模なサンプリングが不可欠であることから,高品質な通信の実現を目指した適応制御への導入は困難であった.そこで本稿では,これまでに筆者が提案してきた,受信信号に対し機械学習を適用させることで複数の通信環境情報を同時にかつ高速・高精度に推定する手法について解説する.

キーワード:機械学習,畳込みニューラルネットワーク,通信環境推定,適応変調符号化

1.は じ め に

 Beyond 5Gや6Gのような次世代移動無線通信システムでは,高速・高信頼・大容量通信だけでなく,低消費電力,低遅延,大規模同時接続が求められている(1).更に,IoTやドローン等の革新的なアプリケーションの発展に伴い,送受信機が高速で移動し,チャネルの時間変動が発生して通信性能が劣化するような劣悪な環境下でも,高品質な通信の実現が要求される.このため,従来から広く普及しているマイクロ波・マクロセル環境に加え,ミリ波・スモールセル環境といった新しいコンセプトの通信システムが注目されている(2)

 高速・高品質な通信を実現する手法として,適応変調符号化(AMC: Adaptive Modulation and Codeing)が盛んに研究されてきた(3).AMCは,受信側で得られた情報を基に送信側にフィードバックすることで,変調多値数や符号化率などの通信パラメータを制御する.従来ではこの制御のための情報として,信号対雑音電力比(SN比: Signal-to-Noise Power Ratio)を用いる手法が一般的であったが,高速移動環境やミリ波,スモールセル環境においては,より繊細で複雑な環境に基づいた制御が必要となり,従来法では通信容量を最大限活用できない(4).この問題を解決するためには,SN比だけでなく,送受信端末の移動に起因するドップラーシフトや直接波と反射波の比を表すライス係数など複数の通信環境情報を制御に反映させる必要がある(5),(6).しかし,これらの複数の通信環境を推定することは,受信側での計算コストの増加につながり,処理遅延や通信性能の低下を招くというジレンマがある(7)

 本稿では,これらの課題の解決に向けた機械学習を用いた複数の通信環境の同時推定方式を解説する.受信信号を時間,周波数,電力を表現可能なスペクトログラム画像形式に変換し,畳込みニューラルネットワーク(CNN: Convolutional Neural Network)により特徴を抽出することで,軽量で高精度な複数の通信環境情報の同時推定を実現する.本稿では,まず適応的な制御に必要とされる通信環境パラメータについて述べ,次に提案する機械学習による通信環境推定方式を紹介する.その後,シミュレーション結果について説明し,結論を述べる.


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