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解説
エレクトロニクスからアプローチする太陽光水素製造とカーボンリサイクル
Electronic Engineering Approach toward Solar Hydrogen Production and Carbon Recycling
A bstract
太陽光を駆動力とする水分解による水素製造と,排出されたCO2を有用な炭化水素化合物に転化するカーボンリサイクルは,カーボンニュートラルの達成に不可欠な技術である.これらは化学の領域と認識されがちだが,その核心である電気化学的な電荷移動は固体物理と理論体系を共有している.本稿では,エレクトロニクスからのアプローチがこれら技術の進展に果たし得る役割を論じる.
キーワード:カーボンニュートラル,太陽光発電,半導体,水素,人工光合成
CO2の蓄積による地球温暖化を減速させ,持続可能な社会を次世代につなぐために,カーボンニュートラルは必達の目標といえる.しかし,その実現には,技術的にも人々の行動変容の観点からも多くの困難が伴う.時間軸や空間軸などで必要な技術開発や施策を整理し,できることから,将来につながる行動を展開することが重要である.
エネルギーシステムにおいては,需要をできるだけ電化した上で,太陽光や風力発電により電力の大部分を供給する必要がある.これら変動電源を補完する火力発電の燃料として,更に電力ではカバーできないエネルギー需要にCO2フリー燃料を供給するために,水素が年間約2,000~4,000万トン必要となる(1).このような大量の水素をCO2排出なしに製造するためには,海外の適地に太陽光から水素を製造する大規模プラントを構築する必要がある.
電化や水素の活用だけでCO2排出をゼロにすることは極めて難しい.製鉄や化学産業から排出される高濃度CO2を回収して暮らしに不可欠な化学品の原料にするカーボンリサイクル,更に一旦放出された希薄なCO2を大気から回収するDirect Air Capture(DAC)技術の開発が進められている.
エレクトロニクスがカーボンニュートラルの実現のために果たすべき役割は極めて大きい.太陽光発電は,電力の直接利用にとどまらず,水電解による水素製造やCO2還元の駆動力としても今後全世界でテラワット級の発電容量が必要となる.DACの駆動にも太陽光電力は不可欠である.
このような電力供給だけでなく,電気化学反応における電荷移動過程を理解し設計するためにもエレクトロニクスは重要な役割を果たす.電気化学における1電子のエネルギーに立脚した描像は,固体物理における電子準位やバンドの描像と同一軸上にある.したがって,2.2に記すように,半導体光触媒に関して,半導体から水中のイオンの反応までを包含する統一的なバンドアラインメントを描くことができる.化学反応の触媒は多くの場合金属や金属酸化物であり,これら物質中の電子を固体物理の描像で捉えた触媒設計が可能である.
本稿では,特に水素製造とCO2の還元資源化を例にとり,カーボンニュートラル達成に不可欠な電気化学プロセスをエレクトロニクスの観点から紹介する.
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