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解説
トゥーンシェーディング技術の発展
――アニメから始まりアニメを超えて――
The Toon Shader for Anime and Beyond
A bstract
トゥーンシェーディングとは，三次元CG（Computer Graphics）で表される表示対象に対して手描きアニメ風の陰影付けをすることを意味する．手描きアニメの中に三次元モデルを違和感なく登場させるために必須となる表現である．本稿では，まずトゥーンシェーディングに関する基本的な考え方と歴史，更には実用上の問題点と解決事例について述べる．トゥーンシェーディング及び関連する技術の進化や多様化についても，昨今のGPU及び深層学習的アプローチを用いた2，3の事例とともに考察する．
キーワード：三次元CG，トゥーンシェーディング，GPU，ディジタルアニメーション
トゥーンシェーディング（Toon Shading）とは，三次元形状モデルに対して，あたかも手描きアニメで描かれたような陰影を与えること，またはその技術や手法のことを意味する．一般的には，映画・テレビ・ゲーム等のエンターテイメント分野で用いられる技術として知られている．しかしそもそものニーズは，それに限るものではない．また，昨今のGPUの急速な性能向上と用途拡大の潮流の中で，トゥーンシェーディングのリアルタイム応用や深層学習を援用した進化も見られる．
このような状況を鑑み，本稿では，トゥーンシェーディングあるいはスタイライズドシェーディング（様式化された陰影付け：Stylized Shading）と呼ばれる技術がどのように生まれ，進化してきたかについて，2，3の産業応用とともに解説する．
なお一般的なCG用語として，シェーディングは表示される物体の各頂点での色情報を求めることである．レンダリングは，表示される三次元シーンの情報から表示スクリーンの各画素の色情報を求める一連の処理のことを指している．
三次元物体上の点pでの輝度値を求める方法はいろいろあるが，拡散反射，つまりその点からの反射光が一様に広がる場合を考える．シンプルな計算方法としてランバートの拡散モデルがある．すなわち，点pの輝度値を，点pから光源に向かう単位ベクトルと点pにおける外向きの単位法線ベクトルの内積値に比例する，として求める．図1(ａ)は，三次元CGキャラクタの顔の上をpが動いたときのこの輝度値の分布を表している．この図では，輝度分布を0から1に至る連続的な値として表し，0に近いほど光源の影響が少ない，すなわち「暗い」ということを意味し，同図では黒っぽく表示されている．1.0に近い値を取るところでは白っぽく表している．物体表面の陰影は本来連続的に変化するが，輝度値を明部と暗部の二通りに分ける，すなわち“2値化”することを考える．そのために輝度値を基にして得られる2値化した陰影画像が図1(ｂ)である．更にしきい値を複数導入すればよりきめの細かい陰影付けができる．このようにして得られた画像は手描きアニメでよく見られる陰影付け（シェーディング：Shading）に対応する効果を生み出す．このようにしきい値を用いた陰影付けはトゥーンシェーディングの典型的な手法である．
なおトゥーンシェーディングという言葉の定義に定説はなく，現在ではディジタルアニメ作品に使われるシェーディング全般のことを意味している．
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