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この作品は,図と文章から成り,「2110年に21世紀のアリストテレスの異名を持つ情報通信研究所の研究員である星野アリスが,情報通信学・物理学・化学・地学・社会学・倫理学等を統合する学問としてのBAAT(Basic Conceptional Academic Theory)を形成した.」のような魅力的な書き出しから始まる.そして,以下のような項目が目を引く(図1).
①21世紀の情報通信技術(地球上)
「飛躍的な進歩を遂げ,全世界の量子コンピュータとAIロボットを結び,2023年時点での100兆京倍の通信速度を達成した.」
②21世紀のアリストテレス 星野アリス
「星野は,2123年に宇宙空間上に3ヵ所のひずみを発見し,それを利用して,アンドロメダ銀河上に仮想通信空間イプシロンを創出することに成功した.情報データは,瞬時に空間移動するので,理論的には138億光年の宇宙の果てに,もし生物が存在するならば,相互通信が可能になった.」
③21世紀の情報通信研究所
「2123年12月31日に,2150年迄に宇宙外に仮想空間を作成し,バーチャル通信に挑戦する予定であることを発表した.」
この応募作品について,強く感じるものについて記述したいと思う.魅力的な書き出しの中の“万学の祖”として知られるアリストテレス(1)の異名,そして,“BAATの形成”から,ドラッカーの「これからの新技術はあらゆる種類の知識からもたらされる.」(2)を想起させられて,100年後の通信技術も,文献(2)で示される不変的なイノベーションによってもたらされるのだと納得する.
そして,マケドニアと縁の深い在留外国人であるアリストテレスは,プラトンが死去するまでの20年近い年月後に,アカデメイアを辞して,反マケドニア派が勢いづいていたアテナイを去る.その後,マケドニア王国の中核を担う存在となり,また,アテナイに戻り,アテナイ郊外に学園のリュケイオンを開設してアカデメイアと対抗したりしていたが,マケドニアの支配力が大減退したことにより,アテナイでのマケドニア人に対する迫害にあって,エウボイア島のカルキスに身を寄せ,そこで死去している(1).アリストテレスの異名を持つ“星野アリス”という名前から,純粋な日本人ではない人物であり,特に“星野”から,私の世代の悪い癖だと思うが,文献(3)の主人公の“星野鉄郎”との何らかの類似性も感じてしまう.更に,アリスという名は,暗号通信などの分野で,プロトコル等を説明する際に想定上の当事者として登場する典型的なキャラクタ(量子テレポーテーションの説明でも,送り手のアリスと受け手のボブとして登場している(4).)
①21世紀の情報通信技術(地球上)の記述部分は図1の地球内の情報通信ネットワークの部分であることが分かる.②21世紀のアリストテレス 星野アリスの記述部分は,図1の真ん中部分であり,③21世紀の情報通信研究所の記述部分は,図1の宇宙外のテレポーテーションの部分となっており,図1の応募作品は壮大なすばらしい構想を示し,説明を読み,図を見て考えるたびに,私たちの未来を楽しみにする.
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