1200号記念特集 4 つながるのは自分

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1200号記念特集 4 つながるのは自分 Connect Oneself 金子 美博

金子美博 正員:シニア会員 岐阜大学工学部電気電子・情報工学科

Yoshihiro KANEKO, Senior Member (Faculty of Engineering, Gifu University, Gifu-shi, 501-1193 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.107 No.3 pp.214-215 2024年3月

©2024 電子情報通信学会

1.中 秋 の 名 月

 この原稿を書いている夜分,庭が余りにも明るく何事かと外に出てみると,空には中秋の満月がくっきり.恐らく100年後もその美しさは変わらないであろう.一方,月から見た地球は想像できないほど変わっていることは誰もが想像できる.テクノロジーの進化はすさまじく,もはやICTという用語自体を死語に追いやっているかもしれない.

 100年後の日本は,高齢化が更に進み,本稿を読んでいる現在の小学生の多くが現在の世界最高齢の域に達していて,2124年にもう一度この特集号を目にし,タイムカプセル気分を味わってくれればうれしい.

 誰にでも老いはやって来る.老いを取り巻く環境は年々変わり,健康への関心は高まる一方で,応募作品のように健康を正確に判断するための心と体の関連の更なる解明は進むであろう.体自体を知ることはテクノロジーが助けてくれる.その中の一つは無線ボディセンサネットワーク(WBSN: Wireless Body Sensor Network)(1),あるいはそれを取り巻くボディエリアネットワーク(WBAN: Wireless Body Area Network)(2),(3)として知られている.応募作品に触発され,この分野を少しのぞいてみた.以下誤解ある説明に対してその責めを負うのは筆者である.

2.WBSN(Wireless Body Sensor Network)

 人間の体を扱い,健康促進や病気の早期発見等を目的としたネットワーク研究のWBSNは無線センサネットワークWSN(Wireless Sensor Network)の一分野として,21世紀になってから盛んに研究されるようになった.センサは着脱可能なもの,埋め込まれるもの,それにリモート制御されるものがある.

 センサがデータ感知だけでなく,通信機能を持つことがWSNのポイントである.人体の内外にそのようなセンサを配置しそれらをつなぐネットワークを構成し,感知したデータを1か所に集める.集めたデータをネットワークの外部からの需要に応じて信号に加工するのもWSNの役割である.この‘W’ ‘S’ ‘N’という略英文字で,WBSNやWBAN,下のWRSNなど互いにつながりがあることが容易に連想できる.

 WBSNは,既存のWSNの研究成果を引き継いだ上で,人体の特徴を加味している.例えば,体の熱からセンサの充電をするなど興味深いものがある.センサもWRSN(Wireless Rechargeable Sensor Network)(4)に見られる無線給電という技術により,切開して取り出すことなく持続可能な利用となるであろう.

 WBSNで扱うデータは医療用と非医療用の大きく二つに分けられる.医療用データは,脳波や心電図,筋電図などがよく知られている.また,非医療用としてはスポーツへの応用などがある.両者とも解決すべき課題は多い.例えば,利用者が頻繁に動けば,ネットワークも頻繁に切断される.センサそのものが熱を持つこともあり,それを避けてデータを伝える仕組みが必要である.いずれにせよ,それまでWSNでは考慮されなかった制約がWBSNやWBANにはあまた存在する.

 実際に疾病に罹患して生体データの監視が重要な場合,常時つながっていることが必要不可欠である.それを支えるのがデータの質を扱うQoS(Quality of Service)ルーチングという分野である.WBSN,WSN双方に盛んであり,百花繚乱の感がする.異常検知に迅速に対応できるようデータの種類を分類する研究もある.最近ではセキュリティとプライバシーを扱う研究も増えている.WBANでは,そのようなQualityの要求がWSNに比べ格段に厳しく,実装へのハードルは高いようである.


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