1200号記念特集 9 “私の思う100年後の未来”に対して

電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
Vol.107 No.3 (2024/3) 目次へ

前の記事へ次の記事へ


1200号記念特集 9 “私の思う100年後の未来”に対して The Future in Next 100 Years I Think 佐藤 弘樹

佐藤弘樹 正員:シニア会員 ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社モバイルシステム事業部

Hiroki SATO, Senior Member (Mobile System Business Division, Sony Semiconductor Solutions Corporation, Atsugi-shi, 243-0021 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.107 No.3 pp.233-236 2024年3月

©2024 電子情報通信学会

1.はじめに――コミュニケーションとは――

1.1 筆者の経験――生成AIによるチャット――

 筆者はたまに英語圏だけでなく,中国語圏,スペイン語圏,ポルトガル語圏に住む友人とチャットすることがある.英語だけならまだしも中国語,スペイン語,ポルトガル語では,語彙力も文法力もままならず,ほぼ100%翻訳ツールに頼ることになる.今までは,日本語の文章を直接中国語,スペイン語,ポルトガル語に翻訳しても,ニュアンスが伝わるか不安が残り,中国語,スペイン語,ポルトガル語から日本語に逆翻訳して確認したり,一旦英語に翻訳し直して確認したりと,幾つかの方法を駆使し,なるべく多角的に確認していた.しかし,ここ最近は翻訳ツールでの翻訳結果をいわゆる生成AIで更に確認している.生成AIは文脈まで理解して,最適な翻訳を提案してくれるからである.

 例えば,先日ブラジル在住の友人が亡くなった際に,彼の家族にお悔やみのチャットを送った.その際に翻訳ツールで日本語からポルトガル語に訳した後,念のため生成AIにてポルトガル語の確認を行った.生成AIは文脈を読み取り,始めに筆者に対しての簡単な気遣い⁈の言葉を示した後,相手家族に筆者の気持ちが伝わるような修正提案をしてくれた.少なくとも既に生成AIは私や相手家族の気持ちに寄り添ってくれていると言ってもよい.

1.2 コミュニケーションの歴史

 言語や直接的な触れ合い以外人の情報伝達,コミュニケーションは,紀元前3000年頃の古代メソポタミア文明での粘土板による手紙があったり,紀元前8世紀頃の様子を記述した司馬遷の史記による狼煙や太鼓(トーキングドラム)があったりと,視覚,聴覚による原始的なものであった(1).だいぶたった後で,エレクトロニクス技術を用いた情報伝達手段が開発された.例えば,1829年のPavel Schillingのシリング式電信機や1837年Samuel Morseの電気的テレグラフがある(2).その後,1870年代に発明された電話により音声の情報伝達が可能になった.視覚による情報伝達では,リアルタイムではないが1888年のThomas Edisonとその弟子William Dicksonによるキネトスコープの発明がある.長らく情報の伝達は,音声による聴覚と文字若しくは映像による視覚が基本であった.前述した生成AIも視覚若しくは,最近はAIによるニュース読み上げなどもあり,聴覚に頼っている.

2.ロボットの登場――コミュニケーションの変化――

2.1 産業用ロボットの活躍

 いわゆる産業用ロボットは,主に工場での搬送,加工,組立,洗浄など様々な工作を行っている.世界初の産業用ロボットは,1962年George Devol, Jr. とJoseph Engelbergerによる「ユニメート」を自動車産業に取り入れたことに始まる(3).その後,欧米や日本の工業化を中心に展開されてきた.産業用ロボットは人ができないこと,難しいことを人の代わりに行うことが主であるため,人とのコミュニケーションは余り考える必要はなかった.しかし,現在では広義の産業用ロボットは,工場だけでなくレストランなどでの配膳を行うロボットや案内をするロボットなども登場し,主に音声による簡単なコミュニケーションをするなど,身近になっている.


続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。


続きを読む(PDF)   バックナンバーを購入する    入会登録

  

電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。

電子情報通信学会誌 会誌アプリのお知らせ

電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード

  Google Play で手に入れよう

本サイトでは会誌記事の一部を試し読み用として提供しています。