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解説
RISC-Vとオープンハードウェアと日本の半導体業界の未来[Ⅰ]
――注目される背景,技術的特徴,AIアクセラレータへの道――
RISC-V, Open Hardware and the Future of Japanese Semiconductor Industry[Ⅰ]: Background, Technical Aspects, and the Road to AI Accelerator
A bstract
全3回にわたるRISC-V解説.RISC-VアーキテクチャはCPU設計の世界で初めてコミュニティを醸成する動きである点を第1回で紹介する.公開の場でAIとセキュリティ機能の強化が行われ,特定分野において高シェアを占めている.2回以降で昨今のRISC-Vの動向,適した用途やRISC-V Internationalの役目,半導体製造におけるツールのオープン化の波,各国のファウンドリー工場増設等RISC-Vが引き起こした流れを説明する.上手に本稿を活用することによる技術開発とその蓄積は,ディジタル技術分野での日本の国際的競争力の向上に資する.
キーワード:RISC-V,セキュリティ,AI,オープンソースPDK,ディジタル技術,輸出競争力
現在Intel社とARM社の命令セットをサポートしたCPUが幅広く利用されている.サーバやPCではIntel社製(若しくはAMD社製)のCPUが,スマートフォンやIoT機器ではARM社の命令セットをサポートした各半導体メーカのSoCが使われている.これらの命令セットInstruction Set Architecture(ISA)は両社の知的財産であり,この命令セットをサポートしたCPUの製造及び販売には有償の使用許諾が必要である.従来のCPUの命令セットはその開発企業で管理,拡張されており,第三者がその開発に直接関わる機会はない.つまり非常に限られた世界でCPUの研究開発は進められている.
一方,近年注目されているRISC-VはRISC-V InternationalでISAが公開されているオープン規格(1)のCPUであり,誰でも自由に本ISAに基づいたCPUを設計,製造,販売が可能である.RISC-V ISAの仕様はRISC-V InternationalのTechnical Working Group(2)の場でオープンに議論され,誰でもISAの拡張議論に参加できる.このようにCPU開発の世界にオープンなコミュニティを醸成する新しい試みがRISC-Vである.
また,RISC-VではISAの規格が公開されたことで,大学,企業,コミュニティ,個人など幅広くCPUの設計開発に関わることができる.また,ISAが特定企業の知的財産に属さないため,こうして開発された幾つかの実装はオープンソースとしても公開できる.公開された実際のCPUの実装に誰でも自由にアクセスできることで,個人,小規模の企業や大学による独自RISC-VのFPGAやASICでの実装や,重工業など特定用途や少ロット生産製品向け製造,独自の命令セット追加やアクセラレータによるRISC-V CPUの高速化,コアの自作,コア内部の理解が必要なソフトウェアの開発などが可能になった.この技術的学習と特定用途向け機会の提供がRISC-Vの一番のメリットである.分かりやすく言い換えると用途に合わせてハードとソフトを最適化できるのが今注目される理由である.
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