特集 4. 人と融和して知の創造・越境をするAIロボット

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特集4. 人とAIの協働
人と融和して知の創造・越境をするAIロボット
AI Robots That Harmonize with Humans to Create Knowledge and Cross Borders
牛久祥孝 進藤裕之 藤吉弘亘 山下隆義 馬場雪乃 吉野幸一郎 松原誠二郎

牛久祥孝 正員 オムロンサイニックエックス株式会社

進藤裕之 奈良先端科学技術大学院大学データ駆動型サイエンス創造センター

藤吉弘亘 正員:フェロー 中部大学理工学部AIロボティクス学科

山下隆義 正員:シニア会員 中部大学工学部情報工学科

馬場雪乃 正員 東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻

吉野幸一郎 理化学研究所情報統合本部

松原誠二郎 京都大学大学院工学研究科材料化学専攻

Yoshitaka USHIKU, Member (OMRON SINIC X Corporation, Tokyo, 113-0033 Japan), Hiroyuki SHINDO, Nonmember (Data Science Center, Nara Institute of Science and Technology, Ikoma-shi, 630-0192 Japan), Hironobu FUJIYOSHI, Fellow (College of Science and Engineering, Chubu University, Kasugai-shi, 487-0027 Japan), Takayoshi YAMASHITA, Senior Member (College of Engineering, Chubu University, Kasugai-shi, 487-8501 Japan), Yukino BABA, Member (Graduate School of Arts and Sciences, The University of Tokyo, Tokyo, 153-8901 Japan), Koichiro YOSHINO, Nonmember (Information R&D and Strategy Headquarters, RIKEN, Kyoto-fu, 619-0288 Japan), and Seijiro MATSUBARA, Nonmember (Graduate School of Engineering, Kyoto University, Kyoto-shi, 615-8246 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.107 No.5 pp.403-410 2024年5月

©2024 電子情報通信学会

abstract

 AIとロボットの活用により,実験科学に参加する人々の生産性が向上することを目指して,2023年からJSTムーンショット型研究開発事業「人と融和して知の創造・越境をするAIロボット」プロジェクトが開始した.このプロジェクトは,AIロボットと人間の共進化を重視し,人間の協力の下でAIロボットが自動化できる領域を段階的に増やしていくとともに,人間の科学者もAIロボットからひらめきを得て,創発的研究活動のレベルが引き上がることを目指している.本稿では,本プロジェクトの取組みと,AIロボットと科学者の共進化の可能性について解説していく.

キーワード:AI for Science,基盤モデル,マルチモーダルXAI,インタラクションAI

1.は じ め に

 多様な分野においてAI技術の応用が進む中,実験科学におけるAI活用への期待が高まっている.AIとロボットの活用により,実験科学に参加する人々の生産性が向上することを目指して,2023年からJSTムーンショット型研究開発事業「人と融和して知の創造・越境をするAIロボット」プロジェクトが開始した.このプロジェクトでは,研究活動を構成する「仮説設計」「実験」「解析」「記述」というサイクルを支援・自動化するAIロボットを開発する.特に,AIロボットと人間の共進化を重視し,人間の協力の下でAIロボットが自動化できる領域を段階的に増やしていくとともに,人間の科学者もAIロボットからひらめきを得て,創発的研究活動のレベルが引き上がることを目指している.

 本稿では,本プロジェクトの取組みを中心に,AIロボットと人間の科学者の共進化の可能性について解説していく.特に「マルチモーダルXAI(Explainable AI)による論文の相互関係理解」「研究者とのインタラクションAIによる知識探究」「フィジカル空間との融合AIによる知識探究」の三つの観点で解説する.

2.マルチモーダルXAIによる論文の相互関係理解

 本章では,論文をその図表まで含めて理解し,研究者が理解できる説明を提示するための要素技術について解説する.


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