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建築産業においても自動化技術が多数,研究・開発され,AIも重要技術として考えられている.特に建築分野ではBIMをはじめとした三次元設計技術が幅広く普及し始め,工事現場に関するディジタルデータが安定的に作成される素地が整いつつある.このようにAIを活用する環境が整いつつあるが,建築プロジェクトの運営上の商習慣と,建築工事における労働集約的な作業手順により,AIの活用するフィールドが狭まっている.このような商習慣や作業者との共生など人間的な課題に関して解説する.
キーワード:建築工事,自動化,AI,BIM
建築産業における情報化技術の導入は古く,半世紀以上にわたり,研究,技術開発,普及活動が実施されてきている.何かと世間を騒がす機会の多い業界である一方で,工事のプロセスそのものがメディアで紹介される機会はほとんどないため,工事現場の仮囲いの中における状況や技術進歩を世間が知る機会が余りない.また,建築物を生産するプロセスは,他産業の製品とは異なったプロセスとなっており,新技術導入においても,建築産業独特の課題が存在する.特に建築産業はかなり労働集約的な産業であり,AIをはじめとした自動化技術の導入においては,人との共生が必須となる.この点についても本稿において紹介する.
本稿における話題を以下に示す.
(1)我が国の建設市場の位置付け
(2)BIMをはじめとした三次元設計の普及
(3)建築分野におけるAIの利用状況
(4)建築プロジェクトの流れ
(5)建築工事における課題
世間一般においては,「建設産業」と呼ばれるが,日本においては,建設産業は「建築業」と「土木業」にはっきりと分かれている.大学教育においても,建築学科と土木学科で別々のカリキュラムになっていることが多く,法令や資格制度なども大きく異なっている.また,建設業の有力な業界団体である日本建設業連合会も,2011年に合併するまで「建築業協会」と「日本土木工業協会」とに業界団体も分かれて存在していた.とはいえ,建築工事と土木工事の両方を実施する建設会社が多く,以前から建築と土木間での交流はそれなりに存在している.
この建築工事と土木工事の最大の違いは,発注者が大きく異なる点にある.建築工事では個人や民間企業からの発注が9割であるが,土木工事では国や地方自治体などの公的団体が発注の9割を占めている.
このような建築産業は1990年前後に発生したバブル景気をピークとして,その投資額は減少し続けていたが,図1(1)に示すように,東日本大震災の復興需要をきっかけとし,更に日本国内の景気回復,インバウンド需要の増加,eコマースの広がりによる大型倉庫の建設ラッシュなど複合的要因により,2010年代に入ると建設投資額は上昇に転じている.特に建築工事は,建築投資額で43兆円を超える金額に回復し,1990年前後に記録した50兆円に近い水準の投資が行われている.
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