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本稿では,気象分野における人とAIの協働の現状と未来について論じた.気象データの活用は健康,交通,電力など多岐にわたり,その重要性が増している.気象予測プロセスは,観測と数値予報及び数値予報結果の補正や翻訳で構成されている.AIは,観測データの雑音除去や数値予報結果の補正などに利用されており,近年は数値予報モデルを用いないAIによる気象予測も注目されている.AIの進展は,気象概況の作成やコンサルティングなど人間の業務を補完する可能性を示しており,今後の気象予測分野におけるAIの活用と協働の拡大が期待される.
キーワード:気象予測,数値予報モデル,AI気象予測モデル,生成AI
気象分野における人とAIの協働について,気象予測における実例を基に解説する.1.では,気象データの利活用の状況と課題を,2.では気象予測作成の流れとAIの利活用状況を概説する.3.では,気象分野におけるAIの利活用の実例を,4.では,これからの気象分野における人とAIの協働への期待について述べる.
天気は,様々な場面で私たちの生活や企業の活動に影響を与えている.例えば,傘を持参する必要性や服装の選択といった日々の生活,大雨や暴風などに伴う気象災害への防災対策などに,気象予測情報は以前から活用されている.
近年は,より広い範囲で気象データの活用が進んでいる.健康分野では,天気の変化が原因で起こる身体の不調に備えるための気圧予報や,冬の寒さに起因する「浴室事故」を防ぐためのヒートショック予報などが存在する(1).交通分野では,大雨や強風,大雪が予見された際の計画運休や事前通行止めの判断のために,数日程度先までの気象予測が活用されている.電力分野では,電力の供給計画や自然エネルギーの発電量予測や発電量計画において,気温や日射量,風の予測情報が利用されている.また,気象予測データと様々な業界のデータの関係性を分析することで,商品の需要予測や来店客数予測,更には商品のプロモーションへの利用など新しい分野への活用も進められている(図1).
国土交通省では,2,059社を対象にした産業界全体における気象データの利活用状況などの調査を行っている(2).この報告によると,自社の事業が気象の影響を受けていると考えている企業は6割以上(65.4%)に達している.一方,気象データを事業に利活用している企業は約3割(32.5%)であり,更に気象データを収集・分析し将来予測を行って,事業活動に利活用している企業は約1割(12.1%)とのことである.同報告では,気象データの利活用促進に向けた取組みについて,「基盤的気象データのオープン化・高度化」「気象データ利活用に係る普及啓発」「気象データを利活用できる人材の育成」が必要との取りまとめがなされている.
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