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スポーツ分野におけるAIの活用場面は,①データを収集する場面,②収集したデータから指標や知見を導く場面,③得られた知見から未来を予測する場面,に分類できる.手軽にデータを集計し動作を計測する装置やアプリが開発され,スポーツの様々な場面でパフォーマンスが数値化されている.今後はセンシング技術,審判の判定,プレー予測など人間の判断に関するAIが増加すると予想される.AIとの協働は人間が実施することのサポートであることが望まれ,AIのミスによるリスクの想定や倫理的問題に事前に留意する必要がある.
キーワード:スタッツ,位置情報,パフォーマンス,センシング技術,プレー予測
スポーツは,人間の身体活動を通じて記録や勝敗を争うものである.デバイスの大きな革新がある以前の2000年初頭まではデータ収集にも多大な労力や費用が必要であることも多くAIなどのデータサイエンスを活用するためには課題が散見されていた.ところが,2007年にiPhoneが発表されるなどスマートフォンやタブレットを代表とする各種デバイスや画像処理用の公開プログラムなどが普及することでスポーツデータの収集可能性やデータ処理効率が向上し,現在では動作解析,位置情報のトラッキングデータやプレーのスタッツデータ収集,コンディション情報のプラットホーム構築,観客の混雑予測,動画像の自動編集,各種データの統合などが,機械学習などのAIを駆使して行われている.
スポーツ分野におけるAIの活用場面は,①データを収集する場面,②収集したデータから指標や知見を導く場面,③得られた知見から未来を予測する場面,というそれぞれの局面に分類できる.現在でもかなり革新的な変化を感じることができるが,今後は人間の感覚や判断といった人間やスポーツの質的な部分にもデータやAIが関わってくることが予想される(図1).
スポーツでは記録や得点などの数値でパフォーマンスが表され勝ち負けや順位が評価されたり,個人成績が記録されたりしている.陸上や水泳など第1回オリンピックから続く種目や野球やサッカーなど古くからプロ興行が行われている競技は100年以上前からのデータが残されており,例えば野球のメジャーリーグでは大谷翔平選手がベーブルースの記録を100年振りに更新した,などとする記事が見られたりする.
また,近年ではコンピュータなどのテクノロジーが発達し手軽にデータを集計したり動作を計測する装置やアプリが開発されたことで,プロスポーツだけでなくレジャーとしてのスポーツでも多くの場面でパフォーマンスを数値化することができるようになった.
更に,欧米ではスポーツ情報の一部または全部が公開されるようになってきており,指標の開発が進む一因となっている.野球のメジャーリーグでは投球弾道データシステム「STATCAST」によるデータがMLB公式オンラインサイト「gameday view」でほぼ毎試合公開されており,一球ごとのボールの軌道が表現されている.フリーの統計解析ソフトウェア「R」において,gamedayデータのスクレイピング専用に「pitchRx」というパッケージがありgamedayデータを取得することができるという(1).欧州サッカーでも「floodlight」というPythonパッケージでStatsBomb OpenDataというサッカーのイベントデータ(位置情報,各種スタッツ)を利用することができる(2).
スポーツのデータを分類することで分析方法を選択でき,今後の発展可能性を予期することが可能となる.以下に,順序立てて分類し紹介してみよう(表1).
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