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日本の医療は,超高齢化社会の到来による医療コストの増大,医療を支える医師や看護師の過重労働,働き方改革など多くの課題を抱えている.AIはこの課題を解決する特効薬として期待されており,近い将来,医療分野において,人間とAIが協働することは必須となるであろう.本稿では,医療者サイド,患者サイド,医療者と患者の仲介など三つの観点で,自然言語処理ベースのAIを紹介し,実際に実用化する際の問題点について議論を行う.
キーワード:自然言語処理,医療言語処理,生成モデル,チャットボット,患者コミュニケーション
現在のAIを支えている大きなドライビングフォースが大規模言語モデル(LLMs: Large Language Models)や生成AI(Generative AI)といった自然言語処理(NLP: Natural Language Processing)の技術である.しかし,NLPの医療分野での動向を見てみると,他分野と比べて,まだ,決定的なアプリケーションは存在せず,導入に慎重な姿勢が見られる(1).これは,人命が関わる領域であり,また,AIが提供可能なサービスが医師法などの法律で規制されていることが一因だと思われるが,本来,医療分野ほどAIが必要とされている分野はないように思える.というのも,超高齢化社会の到来による医療コストの増大,医療を支える医師や看護師の過重労働,その過重労働が制約され得る働き方改革など多くの課題を抱えている.AIはこの課題を解決する特効薬として期待されており,近い将来,医療分野において,人間とAIが協働することは必須となるであろう.特に,真っ先に超高齢化社会を迎える日本は,医療分野でのAI導入の先進的事例で世界をリードできる可能性がある.
では,どのように医療にAIが参入するのか,AIと協働するユーザ側により大きく三つの方向性があるように思える.
・医療者サイドのAI: AIが医療者を助ける形で協働する.
・患者サイドのAI: AIが患者を助け,結果として,治療の質を上げる.
・仲介AI(上記二つの中間):AIが医療者と患者の間をつなげる.
狭い意味での医療AIというと,最初の医療者サイドのAIであるが,近年,PR(Patient Reported Outcome)やPPI(Patient and Public Involvement;研究への患者・市民参画)など,患者サイドのAIも重要視されている.しかし,多忙な医療現場に,更に,患者の参画を実施する余力がないことも懸念される.そこで,患者と医療者をつなぐAIのあり方も提案(本稿では,仲介AIと呼んでいる)されている.このような三つの観点で,自然言語処理ベースのAIを紹介し,最後に,実際に実用化する際の問題点について,本研究室が実施したケーススタディをベースに議論を行う.
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