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本会選奨規程第17条による最優秀論文賞(第6回)は,下記の論文を選定して贈呈した.
(英文論文誌B 2023年11月号掲載)
交通機関や公共施設等での治安強化の社会要望を背景に,多数の利用者の流れを止めずに,利用者に負担のないセキュリティ対策が望まれている.本論文は,利用者を立ち止まらせることなく手荷物の中や衣服下に隠された危険物を非接触で検知するIVSと称するウォークスルーセキュリティ検査システムを新たに開発し,主要構成技術とその実装方法について論じるとともに,実機によるリアルタイム性能を評価したものである.
IVSシステムは,電波の透過性を利用してレーダ信号処理により画像を生成し,深層学習を用いてレーダ画像中の危険物を検知する.レーダパネルを対向設置して歩行通路を形成し,レーダの送受信アンテナと被験者の位置関係を考慮して撮像エリアを最適化するマルチ領域・マルチ視点検査方式を提案している.設定された入口/中央/出口の各領域で歩行する被験者の前面/両側面/背面をそれぞれ検査することで,被験者に所定の姿勢をとらせることなく全身検査を実現している.また,レーダ撮像中に被写体が動くことに起因する撮像ぶれを抑制する移動補償レーダ画像生成手法を提案し,高速で高品質なレーダ画像生成を実現している.物体検出においては,レーダ画像を構成する膨大な3D複素データをマルチ領域・マルチ視点検査方式に合わせて圧縮表現することで,演算量を削減しリアルタイム処理を実現している.
これらのレーダ計測,画像生成,検出処理を統合・実装したIVSシステム試作機を開発し,提案技術を実機によるリアルタイム動作で検証している.移動補償レーダ画像生成技術により,被験者が1.5m/sまでの速度で歩行する現実的な環境下で高品質なレーダ画像が生成され,マルチ視点検査による全身検査において良好な検出性能を達成することが示された.
本論文は,社会課題を起点として実環境要件を満たす移動補償レーダ画像生成技術や高速な3D物体検出技術を提案するだけでなく,これらを統合したシステムとして実装し,実機のリアルタイム動作で世界トップレベルのスループット(~3,600人/h)及び検出性能を実証しており,社会課題解決の道筋を示したことは非常に高く評価できる.今後の社会展開が期待される.
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