電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
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101代電子情報通信学会会長を任じられました慶應義塾大学の山中直明です.就任にあたり,私の学会に対する考えと,その活性強化をする方法について述べさせて頂きます.
IT技術の重要性は格段に増し,本会会員の2万2,000人強は,その中心で活躍しています.また,IT技術そのものも極めて高度化し,複合化していることも事実です.つまり,これから21世紀を生きる上,活躍をする上で,本会の領域を身につけ,カバーし,活用していくことの重要性は疑いの余地もなく,英語や数学と同様に,重要な武器となるでしょう.
一方,会員数は1993年の4万人強をピークに減少し,特に海外会員の減少は顕著です.重要性がこれほど向上している分野の中心的な学会で,会員数を減らしているのは,日本自身の競争力(この分野でプレーする人が減る,プレーしている人のスキルアップができない)においても,大きな問題と認識しています.(実は,博士進学率がOECD国の中で唯一減少しているのと同様です.)これは,森川前会長も主張をされていた,学会の時代の要求に対する変化が不十分であったことにほかなりません.私も,会長在任中に少しでも会員の皆様,社会の方々から必要とされる学会へ変化させようと思いますので,お力添え頂けますと幸いです.
現在の本会は,先端の研究者及び学生等の活動が中心で,論文や研究会が活発に行われております.一方で,企業の多くの方は,実ビジネスを中心に活躍されており,その方たちに応えるサービスは不足しています.また,学会を通してキャリアを形成するシステムも弱く,就職や転職のチャンスになっているとは言えません.技術の出口として,重要性を増しているスタートアップの支援も強化が必要です.図1に示したように,構成や世代とそのアクティビティを見ながら,一生を通して利用できる学会にしていきます.
更に,会員数を増やして,アクティビティを上げるには,適用する世代を広げることが重要です.一方,グローバル化の促進もまた必須です.会員の方々も,国内にとどまらず,本会をグローバルへのドアとして利用頂き,ビジネス等の範囲を広げなくてはいけません.後で詳述しますが,私が考えるグローバルは大きく二つの方向があり,ポートフォリオする必要があります(図2).分かりやすくするため,少し極端な言い方をすることを御容赦下さい.一つは英語を中心とした(今は,「英語による」と言った方がよい)グローバル化で,IEEEのように世界Instituteを形成していきます.このグローバルは,我々も長年経験しており,説明は不要ですが,IEEEを中心としたトップジャーナル,トップコンファレンスで競いながら,プレーをするスタイルです.一方,分散型というグローバルもあると思います.ローカルには,ローカルに重要な問題もあり,ローカルなアクティビティもあります.また,ローカルで検討して,グローバルにアップストリームするのが普通です.つまり,日本の研究会のような母国でのローカル活動ですが,それらを複数の国でつなぎ合わせて相互に緩く結合した,言わばグローカルな世界を考えています.これについては,後述致します.この二つの問題を中心とし,1年間全力で取り組みたいと思います.
森川前会長は,「変わらない(学会の)ために変わり続ける」と言われていました.私は2040年になっても,必要なものの中心は,むしろ人間であり,それが原点であると信じています.
私の出身大学,慶應義塾大学の創始者の福沢諭吉は,当時,英語のSocietyを人間交際(じんかんこうさいと読みます)と訳しています.彼は,多くの英語の単語を日本語に直しており,Speech=演説,などが例としてあります.私たちのSocietyのイメージは,インフラ,通信,電気,若しくは企業や社会システム,政治などが先に頭をよぎるのですが,福沢は,むしろ,人と人とが交流し,協力して,お互いに高め合い,成長していく営み自身が社会(Society)であると考えます.それは,家庭で考えるとよく分かります.家庭とは,少なくとも「お金を払う」とか,インフラである家具などではなく,お父さん,子供とか,それらの関係こそが,家庭(社会)と言えます.
「学会=人間交際の場」と思います.元々学会は同業者組合です.皆が集まり,お金(会費)を払い,お互いの技術を紹介し,困ったときには助け合う組織としてスタートしています.これが原点で,会員の皆様は,立場や興味が多少違っていても,会社や学校の中だけでは出会えない,異なる分野の世代を超えた世界中の専門家や,いろいろな技術を持った人と出会い,「連携」「協力」をするチャンスを手にできます.これこそ社会,つまり人間交際のポイントです.
もしも,我々が属している本会の最大の武器の一つが,この人間交際だとすれば,サービスを期待するものでも,情報を収集するものでもないはずです.むしろ,本会は,連携・協力,つまりシュンペーターの言う「新結合」,つまりイノベーションを真に生むプラットホームなのです.
次に,本会の優れているところ,そして改善すべきところについて述べます.もしかしたら,日本の,と言った方がいいかもしれません.「失われた30年」とか,「日本はOECD最下位」とかの言葉に,とても違和感を覚えています.余り日本の調子が良くないのは分かりますが,極論とも思われます.ここで,少し視点を変えて,急いで改善すれば大きく改善するポイントを考えてみました.
現慶應義塾塾長であり,私の仲の良い尊敬する同僚でもある伊藤公平さんが,とても面日いエッセイを投稿しているので御紹介します.慶應義塾の塾長室だより
(https://www.keio.ac.jp/ja/about/president/blog/2024/2/27/379-157072/)
にオープンになっておりますので,原文を是非読んでみて下さい.勝手に都合の良い部分を解説すると以下のようになります.
イソップの「ウサギとカメ」は,日本ではカメがコツコツやって,ウサギに勝つ話ですが,米国では,油断をするとカメに負けるという話になっています.(彼はUCバークレーの博士ですが,米国を理解しつつとても日本人的な人です.)
彼の研究は慶應の中でも1,2を競うグローバルです.多くの留学生が来ていますが,米国のように目の色を変えて実験設備を取り合うようにして成果を出すのとは異なり,お互いに譲り合いをします.また,先輩が後輩を指導し,その後輩がまた次の人に教えているのをよく見て,留学生も同じことをし,また留学生の多くが,それを高く評価しています.(日本のいいところです!)
我々はウサギにはなれない,向いていない.本当にウサギがよければ,多少の失敗やマナー違反は許容し,パフォーマンスの悪いウサギは出て行ってもらい,即戦力で生き残ったウサギで競争します.しかし,きっとウサギ流のグローバルウィナーは,日本にはなじみません.つまり,カメはカメに戻って,真面目に積み上げて,協力して,質の良い成果を作っていきましょう,とあります.
一方で,痛烈な皮肉もあります.「一切の減点も避けたい真面目なカメは,ガバナンスやコンプライアンスの完全遵守に過剰な労力を割き,欧米で持て囃されるトレンドに引っ張りこまれることによって,我が国が誇るカメ流の研究やビジネスの前進が止まる様子が見受けられる.」ともあります.カメは真面目で丁寧でコツコツではなく,動けなくなってしまいました.
図3に,ウサギとカメの戦略を示してみました.
私が子供だった頃,サッカーや野球で,こんなに世界で活躍する日本人が出るとは思っていませんでした.大リーガーは別世界,ヨーロッパのサッカーなんて見たこともなかったのですが,今は,ワールドニュースで紹介し切れないほど日本人選手が活躍しています.ラグビーを見て下さい.ワールドカップでは大活躍,それも,いろいろな国から来た方々が日本生まれのカメたちと協力して,カメ方式で体の大きい海外のチームに互角に戦う姿は世界が本当に驚かされています.きっと次は,我々技術者が,再び日本を世界のグローバルスタンダードに持っていくと思います.シードは山ほどあります.
次期会長に選ばれた後,「IEEEでは」とか「米国」ではという多くのウサギゲームのやり方をサジェスチョンされました.しかし,IEEEや米国のやり方をそのまままねし目指しても,カメではやはり勝てる気がしません.なぜなら,ウサギの世界ではウサギのルールの評価ポイント,ウサギのやり方で見られるからです.ウサギは大切なライバルでありパートナであるのですが,やっぱりカメのルールを見つけ,カメのやり方を,私は会長として進めたいと思っています.日本は,世界でトップクラスのポテンシャルを持つシード技術が数多くあります.我々がこれをカメ方式でビジネスへつなげ,総合力を発揮して,「社会貢献をすること」という原点に戻ろうと思います.
再度,福沢諭吉の言葉を書きます.「活用なき学問は無学に等しい」と彼は言いました.私は,この言葉との出会いは,本当に大きなインパクトをもらいました.彼は,実用化だけをしなさいとは間違えても言っていません.学問の目指すべきゴールは,社会貢献であり,いろいろな形で人々を豊かにし,平和にし,便利にすることにほかならないと思います.我々学問を志す者は,社会への貢献を,常に謙虚に目指しましょう.基礎研究で新しい原理を発見したら,それを多くの人に説明して,その知識の普及に努める謙虚さも社会活用と思います.論文の本数やインパクトファクターも重要かもしれませんが,それよりも,本当に重要で価値のある大切な研究を,自らの興味と信念で進め,一方で,謙虚にカメらしく,他の人にも教え,協力して成果を広げる.これこそ日本型ラグビーの方法です.大谷翔平さんも,自分の好きな野球を実直にコツコツ練習していたと言っていました.
カメは足が遅いのではなく,着実に堅実に協力して進むと考えて下さい.さて,カメの社会で最も重要なことは,互いに尊重し,協力することだと述べました.しかし,本当は「多様な中で」ということが大切であるということをおろそかにしています.むしろ日本は,同質化が強く,はみ出すことを許容する力が弱いと言われています.これからは,むしろ個々の優れた点を見つけ,それを伸ばす教育が必要だということは既に分かっていますので,後はそれを実践するだけです.
図3に示したウサギとカメの戦略で,本会が強化すべきは,カメの戦略であると私は思います.カメは協力し合って進めますが,本会を利用して多様な技術や知識を手に入れると述べました.これは,多くの会員の方はアクセプトされているかと思いますので,ここで別な視点を入れます.
例えば,自動運転技術です.これは,自己位置推定技術,センサ技術,ステアリング等コントロール技術,更に近年はAIを駆使した,物体認識から物体行動推定,危険予知といった技術が盛んに研究開発されています.技術では常に日本は世界レベルであり,最先端です.実際に慶應義塾大学で法科大学院,政策,経済を専門にされている先生と私が技術系代表として大学院生向けにパネルを行いました.よくあるトピックスですが「自動運転技術の今後と世界競争」です.パネルは,「日本が先行していくには?」から「なぜ日本では自動運転車のトライアルが進まないのか?」そして,事故が発生した際の責任のリスクについての議論になりました.会場の聴衆も積極的にパネルに加わり,必ずしも日本に技術がなくなってきたわけではなく,事故のリスクを取れるシステムが弱いということに意見が集中しました.製造者,設計者の責任に100%するとすれば,1億円の車をアクセプトしなければいけない.(原子力発電も同様かもしれません.)つまり,絶対に事故の起こらないものを求める必要性が出ます.一方,マクロには人間が車を運転するよりも事故率は1/100とも,もっと少ないとも言われています.スピード違反もしなければ,信号も確実に守るわけですから.ここで合理的に考えれば,社会で保険システムを利用し,社会のシステムとして事故を保証することもあるという意見が出る一方,所有者責任や使用者責任,設計者責任を免責にすることは危険な考えで,簡単にはできないという意見も出て,夜の懇親会が21:00過ぎにまでなるという,とても良い経験をしました.このことは,コロナのときに日本がすぐにワクチンを出せないとか,今まさに苦しんでいますが,AIを使わない安全ではなく,AIを上手に利用しプライバシーを考える,といった問題も同一です.プライバシー保護とは,技術と法律を駆使し,更に教育によって守ることではないでしょうか? そして,そのことによって,多くのデータを活用できれば,ビッグデータが豊富になり,その経済的効果は絶大です.
つまりは,もう技術だけではありません.それを活用するには,経済(ビジネス),法律,政策を駆使して,連携して進めなくてはいけません.本会が,今後広めていかねばならないのが,この文理融合型のシステムを取り込むことです(図4).
「我々の学会が中心となり,文系の学者に協力してもらえるか?」会長懇談会を行っている日本工学会でいろいろと意見交換をすると,土木学会や建築系の学会の方々はとても生き生きとされていました.図4に示すように,IT技術がこれほど社会でコモディティ化して,重要な要素となっているときに,100を150に改善する技術研究だけでは,不十分であることを痛感しています.本会には,このようにIT技術の周辺にある重要な要素を専門としている方々をアソシエートメンバー(無料)として積極的に連携をして頂く戦略を持っています.また,実は毎月40~50件,やはりIT技術の方を引き込みたいと考えられて,本当にいろいろな活動をされている団体から,シンポジウムや講演会等への協賛等の申し出を頂いています(逆もあります).これを活用して,我々の活動にも文理異業種の御専門の方に参加頂けるように工夫できたらと思います.
これは,一つの電子情報通信学会的なスタイルの例です.分かりやすくするため,できるだけ簡単な言葉で対比的な言い方をしますが,お許し下さい.ウサギの進めるグローバルスタンダードは,「英語」によるグローバルであり,そのルール外の,つまり,「日本語」や「韓国語」の論文は中身がどんなに優れていて重要であれ,価値はゼロ.インパクトファクターはこのルールに基づいて論文の価値を定めています.本当でしょうか? 実は私もウサギ社会のIEEEにあこがれて,40歳のときに,当時日本人最年少でIEEEのFellowをもらいました.つまり,ウサギ評価が絶対だと思っていました.ウサギは競争の中で,どんどん優秀ウサギでチームを作り,トップに上ります.格差は広がり,自分のルール以外を排除することもあるかもしれません.本会のグローバルは,お互いを尊重し,ダイバージェンスを尊重し,みんなで協力して成功を目指します.
図5が本会の多言語プラットホームです.これは,元会計理事石川さんのリーダーシップの下で作られた,世界で初めての論文誌のスタイルではないかと思います.英語の論文を15か国語に訳して,即座に読めるようにしました.また今後は,サーチエンジンで,母国語(例えば中国語)で,本会の英語の論文がヒットします.
IT技術の進化は疑う余地もなく,電子翻訳は,AIにより簡単に進みました.母国語の意味とアイデンティティを再度考えます.英語が得意な人でも,母国と比べ,直感や速読という点でやはり劣り,140%違うという報告があります.つまり,多くの論文を速読するには母国語がよく,また表現も容易であることは明らかです.多くのノンネーティブは,米国のTVを見て,即座に笑うことができない英語レベルです.でも,もちろん日本語のテレビは,他のことをやりながらでも大事なところは見たり笑ったりしています.そのアナロジーで,本会の英文誌4冊,その他レター2冊は,15か国語に翻訳されて,2024年4月から公開しました.まだ,サーチエンジン対応が完成しておりませんが,グローバルサービス化を進めます.本会の論文誌は,その質,量共に実際は極めてパワフルです.それを,例えばドイツ語にして,ドイツの仲間に見せたら,中国語に翻訳して,中国からの留学生が増えたら,今まで気づかなかった人も,ちょっと見てみようかなという気持ちになるかもしれません.これが,本会のグローバル化です.各国や言語のアイデンティティは尊重し,その多様性の中に相互理解が行えるツールを用意します.私は以前,韓国の比較的小さな国際会議に招待講演で2回参加させて頂きました.そこでは,オフィシャルランゲージは韓国語と英語で,私ともう一人の方以外は,みんな質疑が韓国語でした.「何を言っているか分かりませんでした」.でも,中身がないわけではありません.本会の研究会を考えます.「温泉で夜遅くまでずっと議論した」ことのある人は多いと思います.これは,グローバルルール上はカウントゼロ,だから意味がないわけではなく,むしろ,本会に望まれるのは,英語トップ論文誌や英語のトップコンファレンスではなく,このような活動とも思われます.年1万件近い研究会の発表論文は,多岐にわたり,言わば本会の財産です.更に,各個人のキャリアパスも,この研究会の中で,そう「人間交際」の中で,進化していっています.実は,マレーシアの大学にも,シンガポールの研究機関にも,このようなローカルな,でも深い活動があります.これらと電子情報通信学会がお互いに融合するのが,この本会のグローバル戦略と考えます(図2).
最後の話題は,カメの国における学会の大きな仕事である個人個人のキャリアパスサポートです.分かりやすく言うと,就職マーケットです.最初に「ウサギのいいところもあるし,カメの悪いところもある」と言いました.3.では,カメの良い方法を述べましたが,本章では,どうにか変えたい日本のジョブマーケットについて述べます.日本の企業は,大卒,大学院卒の初任給がWebに出ています.これは,「平等?」というメッセージなのか,「大学の教育や本人のスキル,能力には価値がない」というメッセージなのか,分かりません.つまり,レベルの高い教育環境で,必死に勉強をして研究をした学生に失礼だと思いませんか? 日本の常識,世界の非常識です.また,大学の教員の方はよく知っている就職活動スタイル.黒い服を着たリクルート面接では15分間,「一生懸命頑張ります」と言うことを推奨されています.そして,この短い時間で,多様な本人の能力や可能性の「何が分かって」採用されるのでしょうか? ある大学教員のSNSでは,今はやりのインターンシップを「大学生のキッザニア」と話していました.キッザニアのように楽しい体験??をして,実は採用に時間とコストがかかり,どんどん早期化とエスカレートしたインターンシップには,メリットだけではなく,むしろ学生は大切な修士の研究どころではなく,疲れ果ててしまっています.しかし,この変なチキンレースでは,学生はどんどん早くたくさん内定をもらおうとする,企業は学生に逃げられるので,早く多く内定をあげる,というゲームとなっていませんか?
理想は,学生は中・高・大・大学院で,教育と研究などをして,いろいろな「スキル」を身につけ,企業は,この「スキル」と「人間性」を見てから採用します.学生も,大量採用でとりあえず500人内定して,配属はゆっくり入社してから決まるような「就社」はだめです.嫌いな仕事に配属されたら辞めるということも起きています.(就職ガチャと言うそうです.)自分のやりたい仕事へのマッチングをするのであって,この仕事ができますか? と聞いて,是非という企業へ就職,職に就くのです.つまり,スキルを伸ばしてくれる会社に入って下さい.この状況で,学会は,「普段の大学,大学院」の学生の姿を見る絶好のチャンスでもあります.これはまねをしなくてはいけないウサギの世界,米国のトップコンファレンスでは,一流大学の大学院の学生が,自信たっぷりにすばらしい研究成果を発表して,それを見ているGAFAのメンバが,即近寄っていき,「一度うちを訪ねないか?」たまには「高額の給与をオファーしながら」リクルートしている姿を多く見ます.学生にとってトップコンファレンスは,「スキル」をアピールして,就職する場なのです.これは,学生だけではなく,流動性の高まる(いずれ高まる)時代に備え,個人をアピールして,個人と個人もつながる機会にできればと思っています.本会の通信ソサイエティ等でもいろいろと取り組んでいます.学会は出会いの場として,まず連携,そして複数の企業でチームを作ったりする,そんな場所に学会をしていきたいと思います.是非,御協力お願いします.
本会会長になるにあたり,私にとっての学会の価値について述べました.私の祖父は,第16代本会会長であり,また自身も,20歳代初めから40年以上育ててもらった大切な学会です.昭和な考えと御批判もあるかと思いますが,日本のラグビーのようになってもらいたいです.キーワードは,カメの世界ですから,チームワーク,連携,協力,そして,学会は,多様性の起用とグローバル化です.それらが多く集まるウォータリングホール(サバンナの水飲み場)になり,いろいろな動物が水飲み場に集まってDNAを交換して進化する場,イノベーションの場所となります(図6).最後に(再びで恐縮です),福沢諭吉は,「学者は国の奴雁なり」と言っています.学者とは,見識を持った人,そう,本会の会員の人たちのことです.奴雁とは,多くの雁が何も考えないで下を向いて餌を食べているときに,1羽だけ,首を上げて周りを見る雁のことです.奴雁は,「もっとおいしい食べ物があるのでは?」「危険があるのでは?」と,常に自ら考えるべきだと言っています.是非,自らのお考えを,首を上げて周りを見て作り,そして,本会を自らのキャリアのために御利用下さい.学会は,自然にサービスしてくれるのではなく,皆様一人一人によって支えられ,作られるものです.1年間,よろしくお願いします.
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