解説 マイクロ波帯放送番組中継用回線(STL/TTL)の高度化

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 解説 

マイクロ波帯放送番組中継用回線(STL/TTL)の高度化

Advanced Microwave Band STL/TTL Technologies for Next-generation Terrestrial Broadcasting

島﨑智拓 中川孝之

島﨑智拓 正員 日本放送協会放送技術研究所

中川孝之 正員 日本放送協会放送技術研究所

Tomohiro SHIMAZAKI and Takayuki NAKAGAWA, Members (Science & Technology Research Laboratories, Japan Broadcasting Corporation, Tokyo, 157-8510 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.107 No.7 pp.637-644 2024年7月

©2024 電子情報通信学会

A bstract

 現在,地上デジタル放送の放送番組を,放送局のスタジオからUHFの放送電波を発信する送信所まで伝送するため,マイクロ波を使用して放送局から送信所及び送信所間を結ぶ放送番組中継用回線(STL(Studio to Transmitter Link)/TTL(Transmitter to Transmitter Link))が整備され,放送ネットワークが構築されている.地上デジタル放送が開始されてから20年が経過し,新しい放送サービスの実現を目指して4K8Kなどの超高精細度映像,高臨場感オーディオや放送通信融合サービスなどを可能とする次世代地上放送の研究開発や調査検討が進められている.本稿では,次世代地上放送の放送番組を伝送するマイクロ波帯放送番組中継用回線の研究開発について解説する.

キーワード:マイクロ波帯,放送番組中継用回線,STL/TTL,地上放送高度化方式

1.は じ め に

 ディジタル化により高精細度映像(2K)やワンセグなどの放送サービスを実現した地上デジタル放送は,2003年12月に三大都市圏で放送が開始されてから20年以上が経過した.地上デジタル放送では,複数の送信所(親局,中継局)が同じチャネルを使用して同じ放送を行うSFN(Single Frequency Network)が可能なことが特徴の一つとなっている.このSFNを実現するために,放送局から親局,親局・中継局から中継局に放送番組を無線中継するマイクロ波帯を使用した放送番組中継用回線(STL/TTL)が全国に整備され,UHF放送波の送信設備とともに放送ネットワークを構成し,全国あまねく24時間365日安定した放送を届けている.

 一方,4K8Kなどの超高精細度映像,高臨場感オーディオ,放送通信融合サービスなどの新しい放送サービスの実現を目指した次世代地上放送の伝送方式の検討が,NHKの研究開発や総務省の委託研究等を経て,2019年度から4か年の技術試験事務や電波産業会により進められ,2023年7月に情報通信審議会から地上放送高度化方式と高度化放送導入方式(1)の技術的条件が答申された.地上放送高度化方式においても,SFNによる放送ネットワークが想定されている.そのため,NHKでは,地上放送高度化方式に対応したSTL/TTL(以下「高度化STL/TTL」)の検討を前述の技術試験事務の下で進め,更に2023年度から開始された技術試験事務において,引き続き高度化STL/TTLの技術的条件に関する検討を行っているところである.

 本稿では,2.でまず現行地上デジタル放送のマイクロ波帯STL/TTLの概要について解説する.続いて3.で高度化STL/TTL伝送方式について解説し,4.でまとめる.

2.マイクロ波帯STL/TTL

 STL/TTLはマイクロ波帯の周波数(6~13GHz帯)を使用して,数kmの近距離区間から70km前後に及ぶ長距離区間で運用されている.STL/TTLの回線設計では,最大10段の多段中継が想定されている.また,海上伝搬を含む島しょ間の回線など,フェージングの影響を受けやすい回線については,受信アンテナをダイバーシチ化し,更に一部の回線については,バックアップ回線として有線回線が導入されている.


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