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Beyond 5G時代を支える光ネットワークの技術動向と展望
小特集 2.
光ファイバと広帯域無線通信を融合したインフラ用高信頼通信ネットワーク構想
Highly Reliable Communication Network for Infrastructures Using Seamlessly Integrated Optical Fiber and Broadband Wireless Communications
Abstract
電力,鉄道,道路,水道,通信などのインフラは社会の基盤であり多くの設備が必要である.人口減少,需要減少の中でインフラを継続させることは重要な社会課題である.インフラ設備はフィジカル(現実)世界に分散して存在しているが,サイバー空間を活用し,業界の壁を越えてそれらが連携・協働できる世界が「Society 5.0」である.本稿では,当所が目指しているインフラを支える高信頼通信ネットワークの構想であるTOWER LINK(Transmission tower based Optical and Wireless Extremely Reliable Link)を紹介する.通信ネットワークが持続可能な人間性にあふれる社会に貢献することを目指していきたい.
キーワード:ミリ波/テラヘルツ波通信,全光ネットワーク,サイバーフィジカルシステム
我が国のインフラ事業は明治時代に起源を持つものが多数ある.例えば,電気通信に関しては,1869年(明治2年)の東京―横浜間の電報業務が起源となる(1).電力分野に関しては,1878年(明治11年)3月25日に電気の灯りであるアーク灯をグローブ電池で約15分間点灯させることに成功したことを皮切りに,1882年(明治15年)には横須賀造船所や銀座で発電機を用いたアーク灯の利用が始まった(2).図1にアーク灯の街灯が建設された当時の銀座の様子を示す.ろうそくより2,000倍明るいという舶来の電灯を一目見ようと多くの人が押し寄せたことが分かる.その後,電灯の利用のために電力会社が全国に誕生していった.鉄道においては1872年(明治5年)に新橋―横浜間が開通した.安全確保のために駅間に1列車しか進入させない「閉そく運転」が採用され,そこでは,3本の裸線を用いたモールス電信が利用された(3).約150年前に日本に導入された新技術は関係者の絶え間ない努力により,機能や品質を向上させながら,提供エリアを拡大し,生活を快適・安全・便利にし,社会を支えるインフラとなった.
現在,我が国の人口は2004年をピークに減少が続いており,エネルギー需要も減少のフェーズに入っている(4).インフラ事業においては,設備の高経年化と需要の減少という状況下でいかにサービスを維持するかということが.大きな課題となってくる(5).衰微していく社会の変化に合わせ,対応策を柔軟に模索するべき局面にある(6).公共的な側面を持つインフラの存廃は短期的な収益性だけで判断すべきものではなく,様々な関係者が,長期視点に立ち,専門家や非専門家の壁を越えて未来に向けた協働を進めることが期待されている(7).
インフラの継続性を高めるには,構築,保守・保全,運用などの効率化やレジリエンスが重要であるが,その技術として,現場からのデータとディジタル技術を活用したサイバーフィジカルシステムが期待されている.
本稿では,電力用通信ネットワークの概況・課題を示した後,再生可能エネルギーを多く利用した電力インフラを実現するためのサイバーフィジカルシステムの一つとして電力ネットワークのディジタルツインを紹介する.次に,そのようなシステムを支える通信ネットワークの実現に向けた,電力用通信ネットワークの構想(TOWER LINK(注1): Transmission tower based Optical and Wireless Extremely Reliable Link)を紹介し,更に持続可能でレジリエントなインフラの実現に向けた取組みの方向性を提言する.
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