小特集 4. データ分析技術による光ネットワークの運用高度化の取組み

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Beyond 5G時代を支える光ネットワークの技術動向と展望

小特集 4.

データ分析技術による光ネットワークの運用高度化の取組み

Data Analysis Technologies for Sophisticated Operation of Optical Network

小林佑嗣 児玉 純 溝口毅彦 榮 純明 網代育大

小林佑嗣 日本電気株式会社セキュアシステムプラットフォーム研究所

児玉 純 日本電気株式会社セキュアシステムプラットフォーム研究所

溝口毅彦 日本電気株式会社セキュアシステムプラットフォーム研究所

榮 純明 日本電気株式会社セキュアシステムプラットフォーム研究所

網代育大 日本電気株式会社セキュアシステムプラットフォーム研究所

Yuji KOBAYASHI, Jun KODAMA, Takehiko MIZOGUCHI, Yoshiaki SAKAE, and Yasuhiro AJIRO, Nonmembers (Secure System Platform Research Laboratories, NEC Corporation, Kawasaki-shi, 211-8666 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.107 No.8 pp.771-778 2024年8月

©2024 電子情報通信学会

Abstract

 光通信システムの自律化はBeyond 5G実現に向けた重要な研究テーマの一つである.本稿では,光通信分野におけるAI/機械学習技術の応用に関心を寄せる読者に向けて,国家プロジェクトにおいて筆者らが検討を進める,光伝送品質パラメータの推定と光通信システムの異常検知の応用を紹介し,実験データを用いた各応用の基礎評価において高精度な推論モデルを構築したことを示す.最後に,推論モデルの実地導入と長期運用の課題である少量データでの高性能モデルの構築と,解決手法であるドメイン適応の技術動向について述べる.

キーワード:データ分析,AI,機械学習,光通信,ネットワーク,運用管理

1.Beyond 5G実現に向けた機械学習技術の応用

 筆者らは,国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が主導するBeyond 5G研究開発促進事業(1)のうち,課題番号047「Beyond 5G超高速・大容量ネットワークを実現する光ネットワークコントローラ技術の研究開発」を受託し,Beyond 5Gの中核を担う光ネットワークの自律運用に関する研究開発を進めてきた.本稿では,その成果の一部である光ネットワークの自律運用のためのAI/機械学習技術の応用について紹介する.

 テレコム管理分野で最大の国際標準化団体であるTM Forumが,通信事業の運用,保守業務を5ステップに整理している.ステップはExecution(実行),Awareness(検知),Analysis(分析),Decision(決定),Intent/Experience(意図/体感)から成り,併せてその自動化レベル(Lv. 0~Lv. 5)も定義している(2).課題047では自動化レベル4の実現を目指す.自動化レベル4の定義は,ネットワークの予測的・能動的なクローズドループ管理(データ収集,分析,意思決定,実行のサイクル)に基づく分析・意思決定を行うことができるシステムである.筆者らはこれまでAwareness,Analysisのステップにフォーカスし,光通信システムから得られるデータを用いたAI/機械学習技術の応用の検討を進めてきた.これまでに,光受信データに基づいて伝送品質指標を高精度にモニタリングする「光伝送品質パラメータの推定」と,光通信機器の性能データに基づいて光通信システムの異常発生を検知,原因部位を推定する「障害予兆の検知及び原因箇所の推定」の二つの応用を選定した(3).下記にその概要を述べる.

1.1 光伝送品質パラメータの推定

 近年のモバイルネットワークやクラウドの活用拡大,ビッグデータ収集等のトレンドによる急激なトラヒックの増加により,光ネットワークへの大容量化,低遅延化の要求がより高まっている.通信方式や制御方式の向上によって大容量化,低遅延化の要求が満たされる一方で,技術の複雑化により設計の不確定性は増大し,光通信システムの性能設計にマージンを取らざるを得なくなっている.


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