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ミリ波・テラヘルツ技術は未来のセンシングを変えるか?
小特集 4.
is-TPGを用いたシングルピクセルイメージング
Single-pixel Imaging Using is-TPG
Abstract
高い出力と広帯域波長可変性を有する光注入型テラヘルツパラメトリック発生器(is-TPG)を光源に用いて,テラヘルツ(THz)波を用いたシングルピクセルイメージングを行った.THz波が得意とする遮蔽物越しでの金属サンプルのイメージング,及び試薬の分光イメージングを試みた.また,圧縮センシング手法に基づいた,サンプリングレートを下げた画像再構成をテストし,短時間でイメージングが可能であることを実証した.
キーワード:テラヘルツ波,イメージング,シングルピクセルイメージング,パラメトリック光源
テラヘルツ(THz)波は,種々の物質を透過し,かつ試薬類が指紋スペクトルを有することから遮蔽物内薬物の非開披検査応用が期待されている.種々のTHz波発生技術の中でも,ここで用いる光注入型THz波パラメトリック発生器(is-TPG: injection seeded THz Parametric Generator)(1)~(3)は,100W超の高いピーク出力と0.4~5.0THzの広帯域可変性を有し,かつフーリエ限界(用語)の単一周波数発振というユニークな特長を持つ光源である.単純に波長可変光源であるがゆえにフーリエ変換も不要で,ターゲットの散乱回折等の影響も受けにくいことから,時間領域分光法(TDS: Time Domain Spectroscopy)などほかのTHz波システムでは困難な厚手の遮蔽物越しでも測定できる強みがある(1).更に,近年我々はis-TPGを用いた試薬の指紋スペクトル解析に機械学習を導入することで識別精度の向上を図るとともに,多波長発生によってリアルタイム分光識別も実現した(4).
なお,テラヘルツ波帯の汎用分光器であるTDSは,100フェムト秒程度の超短パルスレーザ励起でテラヘルツ波を発生し,サンプル通過後の時間波形をフーリエ変換することにより分光情報を得るが,遮蔽物及びサンプルの散乱によって乱れた時間波形の正確なサンプリング計測が難しいこと,及び検出エリアが数十µmと小さいことなどから,段ボールや気泡緩衝材など厚い遮蔽物越しの測定が難しい.
他方,THzカメラに関して,常温動作かつ高感度の二次元検出装置は現状存在せず,イメージングを行う際はサンプルのラスタスキャンが必要であり測定時間に課題があった.これはis-TPGに限らず,THz技術全般的な長年の課題である.そこで近年,1画素の検出器でも画像取得が可能なシングルピクセルイメージングと呼ばれる画像構成法をTHz波帯でも利用することが提案されている(5).シングルピクセルイメージングは,空間光変調器などで光に空間変調をかけ,変調パターンと単一検出器の強度の組合せから画像を構成する手法であり,カメラなどの二次元センサを不要とし,更に入射光量を十分に取ることができるためSN比の向上につながると期待されている.また,シングルピクセルイメージングでは圧縮センシングと呼ばれる画像再構成手法を用いることで,測定時間の短縮が可能である(6).そのため,実用的なカメラの乏しいTHz波帯のイメージング技術として最適とされ,近年様々な研究が進められてきた(7)~(10).特に実社会での応用を考えると,薬物や処方箋ミスの検査など分光によるサンプル識別は重要であり,THz-TDSや差周波混合光源(用語)などを用いた報告も複数存在する(11)~(13).しかし,多くの試薬類が指紋スペクトルを有し,かつ物質を透過しやすい1~2THz帯において,散乱や回折の影響を受けにくいシステムは乏しく,遮蔽物越しの分光イメージングは容易ではなかった.一方,is-TPGは前述のとおり遮蔽物越しの測定を得意とし,かつ高いダイナミックレンジを有することから,我々はis-TPGとシングルピクセルイメージングを組み合わせることを検討した.
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