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解説
民生技術の宇宙活用の試み
――宇宙の高機能化へ向けた電子情報技術への期待――
Trial on COTS Devices Utilization for Space Development: Possibilities of Electronic Communication Technology for High Performance Space System
A bstract
近年,月,火星など人類の宇宙進出が急速に広がりつつある.このような宇宙進出を実現する広範な技術を効果的に開発するためには,宇宙専用に開発するのではなく,地上の技術との適切な連携が欠かせない.本稿では,地上―宇宙のDual開発を目指したスペースシステム創造研究センターの試みを紹介しつつ,様々な技術での連携の可能性について考える.
キーワード:宇宙居住,民生技術,地上―宇宙Dual開発
近年,人類はその活動範囲を低軌道から月・火星など急速に拡張しようとしている.アメリカ合衆国を中心とした有人月面探査計画「アルテミス計画」が進行中である.アルテミス計画最初のフライトとして,Space Launch System(SLS)の初号機が,世界標準時2022年11月16日に打ち上げられ,無人のオリオン宇宙船を月周回軌道に投入,ミッションを無事成功させた.このことは,月へ人類が進出する上での非常に大きな成果である.
日本の,特に有人を含めた月探査における位置付けが急速に高まりつつある.2024年1月20日には,SLIMが日本の探査機として初めて月面へ軟着陸することに成功した.このミッション達成により,日本は世界で5か国目となる月面への着陸に成功したことになる.更に,日本のベンチャー企業ispace社が,世界初の民間での開発を目指して,月面到達した1回目のフライトに続いて,2回目のフライトによる月面着陸を,日本時間の2025年6月6日に予定している.民間企業としての月へのアクセスは世界に先駆けた試みであり,世界的に大きな関心を集めている.
こうした中,岸田文雄首相(当時)が訪米し,日米両政府が,「アルテミス計画」の中で将来,日本人宇宙飛行士2名を月面着陸させることに合意したというニュースはこうした人類の活動圏の広がりを意識させられるとともに,その中での日本の位置付けについて関心を集める大きなトピックであると言える.日本は,月を周回する宇宙ステーションGatewayの生命維持装置や,月面を走行する有人車両の開発を進めており,こうした月面での有人探査における,重要な技術開発への期待の表れとも考えられる.
このように,より広範囲での有人宇宙活動を実現していくためには,輸送や宇宙機の研究開発に加えて,長期間にわたり,宇宙での生活を維持する宇宙居住に関する技術の発展が欠かすことができない.
このような宇宙居住に関する技術は広範囲に及び,その全てについて宇宙固有の研究開発を行うことは,ばく大なコストと労力が必要となると懸念される.一方,水空気浄化や植物生産など,主として地上のアプリケーションを想定して進められている研究の中には,宇宙居住において重要な技術と共通するものも多い.これらの技術を宇宙利用につなげ,宇宙居住に活用することができれば,地上での社会実装を実現するとともに,宇宙居住技術を大きく進めることが期待される.
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