特集 分子ロボティクス技術の進展 特集編集にあたって

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Vol.108 No.11 (2025/11) 目次へ

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特集 分子ロボティクス技術の進展

特集編集にあたって

編集チームリーダー 山脇大造

 「分子ロボティクス」とは何だろうか? 電子情報通信に関わる読者には耳なじみがないかもしれない.「分子」とあるので化学に関するもののようである.また,「ロボティクス」とくるので化学的にロボットを作るのかなと想像できる.調べてみると,「分子ロボティクス」では,核酸・たんぱく質・脂質等の生体分子を主な素材としてセンサ・プロセッサ・モータといったロボットの基本要素を分子設計し,更にそれらの分子部品を統合したシステム,すなわち「分子ロボット」をエンジニアリングすることが目標である,とあり,現在,既存の学理探究を継続しつつも,その先の医療や産業応用を見越した展開を導く段階にある,とのことである.

 生物・化学的な要素が技術のベースではあるものの,「分子ロボティクス」は化学・生物・情報に加え,物理・材料・機械等の多分野にまたがる学際的な学問領域であり,技術の更なる深化や応用展開のため,読者が関わる電子情報通信技術との連携が重要と考えられる.そのため,本特集では「分子ロボティクス技術の進展」と銘打ち,「分子ロボティクス」技術を本会関係者に広く知ってもらうことを目的に,多様な側面から解説頂く.もし関心を持たれた場合には,著者にコンタクトしたり,関連研究会に参加したり,といった行動につなげて頂ければと考える.本特集が技術のネットワークを広げることに少しでも貢献できれば幸いである.

 第1章では,遺伝子回路で問題となる回路間の混線を解決する技術の現状と今後の展望を解説頂く.

 第2章では,分子ロボットを情報システムとして議論する際に有用な移動計算主体群の分散計算理論を紹介頂く.

 第3章では,DNA計算のこれまでの進展を概観し,周辺技術の限界などから当時は発展できなかった計算機構の再興可能性を紹介頂く.

 第4章では,細胞型分子ロボットに実装可能な機能要素について解説頂き,機能要素の統合例を紹介頂くとともに今後の課題と展望について議論頂く.

 第5章では,DNAナノ構造の相分離現象と分子コンピューティング技術を融合させ,自律的かつ動的な細胞サイズの分子ロボットの構築を目指す研究を紹介頂く.

 第6章では,分子ロボットの新機能を創出する分野である多細胞型分子ロボットに関しその設計手法を外観頂き,医療・環境・産業分野への応用可能性を示す実例を紹介頂く.

 第7章では,DNAを材料にした構造作製アプローチ例として「DNAハイドロゲル」を解説頂く.

 第8章では,DNAを超微細な人工物を組み立てる材料として捉え活用する「DNAオリガミ」技術について解説頂く.

 第9章では,時空間制御可能な外部刺激である光に応答してナノファイバを形成・解離する技術の一例について解説頂く.

 第10章では,9章までの技術論とは異なり,生命に関わる技術において特に重要な倫理学点観点からの考察を紹介頂く.

 最後に,御多忙な中執筆に御協力頂いた著者の皆様並びに著者を紹介頂いた「分子ロボティクス研究会」の皆様に深く感謝致します.また,本特集の企画,提案に御協力頂いた回路とシステム研究専門委員会の皆様,並びに編集に御協力頂いた会誌編集委員会ワーキンググループAの皆様にはこの場を借りまして感謝申し上げます.

特集編集チーム

 山脇 大造   岩居 健太   松田 哲直   相川 直幸   秋笛 清石   今井 國治   大隅  歩   小田川真之   佐保 賢志   孫   冉   宮下 山斗   宮田 孝富 


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