|
電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
© Copyright IEICE. All rights reserved.
|
分子ロボティクス技術の進展特集
1.
分子ロボティクスは,集積回路の夢を見るか
Do Molecular-robots Dream of Integrated Circuit?
分子ロボットを構築する材料の一つである核酸(DNA,RNA等)やたんぱく質は,情報量(配列や構造/形状)を持つ材料であるので,演算能を有し,核酸・たんぱく質をベースにした遺伝子回路は,分子ロボットの基盤技術として期待が寄せられている.しかし,電気回路と異なり,遺伝子回路は,回路を構成する物理的な“線”がないので,従来は,分子が自由に拡散しながら,相互作用し反応が進行する反応拡散系を基にした遺伝子回路が主に開発されてきた.反応拡散系は方程式で反応を記述できるので,様々な機能が実現されてきたが,回路を構成する素子(核酸やたんぱく質)は,固有の相手だろうとなかろうと,自由に相互作用できるので,回路間の混線(クロストーク)が問題となり,複雑な機能の実装は難しかった.この問題を解決するために,近年,素子(核酸やたんぱく質)を基板(DNAナノ構造等のスキャッツフォルド)に集積化し,分子間の距離を制御することで,反応する相手分子を制限したり,あるいは,反応のしやすさを制御したりするアプローチ(集積反応系)が開発されつつある.本稿では,その現状と今後の展望を述べる.
キーワード: 分子ロボット,DNAナノ構造,遺伝子回路,転写,集積反応
近年,読者の皆様の貢献により,AIの進歩が著しい.2027~2030年には,汎用人工知能(AGI)の登場も予測されている.一方で,様々な問題も明らかになりつつある.その一つは,電力問題であろう.AI用データセンターや電気自動車等の影響で,2035年の電力需要は2023年比で24~29%増と見込まれており,昨秋には,2019年に稼動停止していた米国ペンシルベニア州のスリーマイル島原子力発電所1号機を再稼動し,その全発電量(835メガワット)を20年間にわたってマイクロソフトに供給する,という報道があった(1),(2).また,石油ガス資源推進派のトランプ大統領も原子力強化の大統領令を発し,過去30年に2基しか新設していない原子炉の新設を目指している(3).中国も過去10年間に世界で新規運転された原発の半数以上の38基を稼働させ,商業炉は58基と世界一となっている(2025年1月現在.2位はフランスの57基(4),(5).太陽光発電や風力発電等の再生エネルギーの開発や,核融合等の次世代エネルギー開発も盛んである(6).すなわち,各国がAI技術の進歩だけではなく,エネルギーの確保に努力しているのが分かる.
翻って,我々が日常的に使っている脳は,どれくらいのエネルギーを使っているのだろうか.驚くことに一般的には,1W程度と考えられている.富岳の電力消費量が30MW時であるとの話なので,(計算量の違いもあり単純比較はできないものの),かなり省エネであることが分かる(7).脳は通常時はグルコース(糖)を,絶食等によりグルコースが枯渇した場合はケトン体(脂肪酸等から作られるアセチルCoAから生成)をエネルギー源としており,最終的にはこれらのエネルギー源を代謝して得られるアデノシン三りん酸(ATP)を使って,ナトリウムを細胞外へ,カリウムを細胞内へと輸送して神経細胞の膜電位を維持し,信号伝達の基盤としている.
続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。
電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。
電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード