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8.
DNAオリガミ技術を使ったナノスケールの分子ロボティクス
DNA Origami Technology for Nanoscale Molecular Robotics
一般にDNAと言えば,生命の設計図や生物の遺伝物質というイメージが強いが,その優れた性質は生物的な文脈を超えて工学的に活用することも可能である.本稿で紹介する「DNAオリガミ」と呼ばれる技術では,ものづくりを行うための材料としてDNAを捉えることで,超微細な人工物を組み立てることが可能である.DNAオリガミが一般的なものづくりと異なる点は,構造物の設計情報を材料であるDNA自身に持たせる点であり,言い換えると情報と物質が一体となっている.本稿では,化学,工学,情報科学などの観点からDNAオリガミ技術について解説し,分子ロボティクスへの展開について述べる.
キーワード:DNAオリガミ,構造DNAナノテクノロジー,DNA構造体,DNA二重らせん
DNA(用語)と聞けば生命の設計情報を保存している遺伝物質を一般に想像するが,DNA分子はその高いプログラム性のおかげで分子スケールの人工物を作るための材料としても利用可能である.特にDNA分子を材料に極小の構造物を組み上げるものづくりの方法論は,「構造DNAナノテクノロジー」と呼ばれる研究分野として近年急速に発展しており,将来的には投薬・バイオセンサ・スマートマテリアルなどへの応用が期待されている(1),(2).
図1は構造DNAナノテクノロジーの概念的な説明図である.構造DNAナノテクノロジーでは,複数のDNA二重らせん構造を分子材料として,人工的に設計されたナノメートルスケール(nm,ナノは十億分の一)の人工物を自在に組み上げることが可能である.構造DNAナノテクノロジーは,材料に使用するDNA分子の印象から生物や化学の研究分野と思われることもあるが,大量の分子材料が持つ情報をプログラムする観点や,設計したとおりの構造物を熱力学的な操作によって組み上げる観点において,情報学,工学,物理学などの幅広い知見が組み合わさった研究分野と言える.本稿では,構造DNAナノテクノロジーの中でも「DNAオリガミ」と呼ばれる技術を中心に解説し,分子ロボティクスでの活用方法などを紹介する.

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