特集 8. DNAオリガミ技術を使ったナノスケールの分子ロボティクス

電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
Vol.108 No.11 (2025/11) 目次へ

前の記事へ次の記事へ


枠

特集

     8.

DNAオリガミ技術を使ったナノスケールの分子ロボティクス

DNA Origami Technology for Nanoscale Molecular Robotics

川又生吹

区切り

川又生吹 京都大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻

Ibuki KAWAMATA, Nonmember (Graduate School of Science, Kyoto University, Kyoto-shi, 606-8502 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.108 No.11 pp.1086-1093 2025年11月

©2025 電子情報通信学会

abstract

 一般にDNAと言えば,生命の設計図や生物の遺伝物質というイメージが強いが,その優れた性質は生物的な文脈を超えて工学的に活用することも可能である.本稿で紹介する「DNAオリガミ」と呼ばれる技術では,ものづくりを行うための材料としてDNAを捉えることで,超微細な人工物を組み立てることが可能である.DNAオリガミが一般的なものづくりと異なる点は,構造物の設計情報を材料であるDNA自身に持たせる点であり,言い換えると情報と物質が一体となっている.本稿では,化学,工学,情報科学などの観点からDNAオリガミ技術について解説し,分子ロボティクスへの展開について述べる.

キーワード:DNAオリガミ,構造DNAナノテクノロジー,DNA構造体,DNA二重らせん

1.構造DNAナノテクノロジーの歴史

1.1 はじめに

 DNA(用語)と聞けば生命の設計情報を保存している遺伝物質を一般に想像するが,DNA分子はその高いプログラム性のおかげで分子スケールの人工物を作るための材料としても利用可能である.特にDNA分子を材料に極小の構造物を組み上げるものづくりの方法論は,「構造DNAナノテクノロジー」と呼ばれる研究分野として近年急速に発展しており,将来的には投薬・バイオセンサ・スマートマテリアルなどへの応用が期待されている(1),(2)

 図1は構造DNAナノテクノロジーの概念的な説明図である.構造DNAナノテクノロジーでは,複数のDNA二重らせん構造を分子材料として,人工的に設計されたナノメートルスケール(nm,ナノは十億分の一)の人工物を自在に組み上げることが可能である.構造DNAナノテクノロジーは,材料に使用するDNA分子の印象から生物や化学の研究分野と思われることもあるが,大量の分子材料が持つ情報をプログラムする観点や,設計したとおりの構造物を熱力学的な操作によって組み上げる観点において,情報学,工学,物理学などの幅広い知見が組み合わさった研究分野と言える.本稿では,構造DNAナノテクノロジーの中でも「DNAオリガミ」と呼ばれる技術を中心に解説し,分子ロボティクスでの活用方法などを紹介する.

図1 構造DNAナノテクノロジーの概念  左側に示されるようなDNAの二重らせん構造を材料に,右側のような数十nmの構造物を設計する.


続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。


続きを読む(PDF)   バックナンバーを購入する    入会登録

  

電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。

電子情報通信学会誌 会誌アプリのお知らせ

電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード

  Google Play で手に入れよう

本サイトでは会誌記事の一部を試し読み用として提供しています。