|
電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
© Copyright IEICE. All rights reserved.
|
シリコンフォトニクスの産業展開と新応用
小特集 5.
シリコンフォトニクスを用いた光演算回路
Optical Computing Circuits Using Silicon Photonics
Abstract
深層学習の省電力化と高速化に向けて,電子の代わりに光を用いて演算を行う光ニューラルネットワークの研究に再び注目が集まっている.特に多数の光素子を高密度に集積できるシリコンフォトニクス技術を駆使することで,これまでにない大規模な光演算回路をコンパクトに実装できる可能性が期待されている.本稿では,深層ニューラルネットワークの中核となる積和演算を行うシリコンフォトニクス演算回路を中心に,最近の研究開発動向と筆者らの取組みを紹介した上で,残された課題と今後の展望を述べる.
キーワード:光演算,光ニューラルネットワーク,シリコンフォトニクス,深層学習
人工知能(AI: Artificial Intelligence)の中核を成す深層学習技術は,自然言語処理や画像認識をはじめとする様々な分野で目覚ましい発展を遂げている.より複雑なタスクが求められる中で,高精度な学習と推論を行うにはばく大な演算資源を要し,その計算量はムーアの法則を上回る速度で増大を続けている(1).その結果,従来のフォン・ノイマン形電子計算機は,電力効率とスループットの観点で深刻なボトルネックに直面している(2),(3).
このような課題を解消するための一つのアプローチとして,光ニューラルネットワーク(ONN: Optical Neural Network)の研究が近年再び注目を集めている(4),(5).光の並列性と広帯域性を演算に活用するONNは,元々1980年代に活発に研究され,その有効性が実証された(6).しかし複雑な空間光学系を必要とし,実装面での課題などから,飛躍的な発展を遂げたディジタルエレクトロニクスに対する優位性が徐々に失われた経緯がある.
一方,2000年代に出現したシリコンフォトニクス(SiPh: Silicon Photonics)技術は,20年の月日を経て成熟し,多数の光素子を高密度かつ低コストに集積できるようになった.これにより,従来のONNにおける実装面やコスト面での課題が一部解決したことに加えて,昨今のAI需要の爆発的な高まりもあいまって,SiPh演算チップへの期待が急速に高まっている(5).
そこで本稿では,SiPh光演算回路の研究開発動向を概説した上で,筆者らが進めている独自のアプローチと最新の成果を紹介する.最後に,残された課題と展望を述べたい.
図1に一般的な深層ニューラルネットワーク(DNN: Deep Neural Network)の構成を示す.DNNでは,各層において線形な積和(MAC: Multiply-and-Accumulate)演算と非線形な活性化処理を繰り返すことで推論を行うが,特にMAC演算は,入力数に対して
で負荷が増加するため,全体の消費電力と遅延を押し上げる傾向にある(3).したがって,このMAC演算を光により行うことで,大幅な省電力化と高速化が期待される.これまでに様々な方式が提案されているが,光の強度を用いるインコヒーレント型と,光の複素振幅を用いるコヒーレント型に大別される.
続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。
電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。
電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード