解説 人とアンドロイドの非言語コミュニケーション

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Vol.108 No.12 (2025/12) 目次へ

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 解説 

人とアンドロイドの非言語コミュニケーション

Nonverbal Communication between Humans and Androids

下川 航 佐藤 弥

下川 航 国立研究開発法人理化学研究所情報統合本部

佐藤 弥 国立研究開発法人理化学研究所情報統合本部

Koh SHIMOKAWA and Wataru SATO, Nonmembers (Information R & D and Strategy Headquarters, RIKEN, Sagara-gun, 619-0288 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.108 No.12 pp.1200-1204 2025年12月

©2025 電子情報通信学会

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 非言語コミュニケーションは社会関係の形成・維持に不可欠である.しかし,ロボットといった人工エージェントが人と自然に非言語コミュニケーションできるかどうかは,十分に検討されていない.本稿ではアンドロイドNikolaを用い,ライブ表情表出による表情模倣誘発,視線制御による注意誘導,表情・声調・発話内容を組み合わせたマルチモーダル感情表現の3実験を行い,人と同様の処理が行われるかを調査した研究を紹介する.結果は一貫して,Nikolaの非言語行動は人の場合と同様に有効であることを示した.将来的に介護・教育などの現場で,人とアンドロイドが自然にコミュニケーションし合える可能性が期待される.

キーワード:アンドロイド,表情模倣,視線制御,マルチモーダル感情表現

1.は じ め に

 近年,人と人工エージェントが自然にコミュニケーションすることへの期待が高まっている.特にこの数年,大規模言語モデルに基づく人工知能の発展により,人工エージェントの言語コミュニケーション機能が大幅に発展した.こうした人工エージェントが,少子高齢化や人口減少が進行する中で,労働人口の不足を補いサービス業などで活躍できる可能性が期待される.

 しかし,人と人工エージェントの間での非言語コミュニケーションの可能性については,相対的に検討が不足している.心理学研究から,人と人とが感情を伝え合うコミュニケーションでは,発話内容よりも表情や声調といった非言語コミュニケーションがはるかに重要であるという知見が報告されている(1).また実用的にも,介護・教育などの現場で高齢者や子供といった対象に寄り添う支援技術のためには,自然な非言語コミュニケーションが求められる.

 本稿ではこの問題を検討し,アンドロイドNikolaの非言語行動が人の場合と同様に処理されるかを検討した我々の研究を紹介する.Nikolaは理化学研究所で開発されたアンドロイド頭部で,表情と眼球などに35基のアクチュエータを備え,眉,まぶた,頬,口唇などをリアルタイムで操作可能である(2).高い精度と再現性を兼ね備えた表情発現システムを特徴とする(図1).服装や髪型を自由に変更することで,多様な社会環境に溶け込むことができる柔軟性を備えている(図2).本稿では,Nikolaを用いて,ライブ表情表出による表情模倣誘発(3),視線方向による注意誘導(4),マルチモーダル感情表現(5)の3テーマについて調べた実験結果を紹介し,人とアンドロイドが自然に非言語コミュニケーションし合える可能性を示す.

図1 アンドロイドNikola表情再現  表情を操作するためのアクチュエータを35基実装することで人のように豊かな表情を作成することが可能.

図2 アンドロイドNikolaの外観  成人と同等の大きさのアンドロイドのため服装やウィッグ等を使い見た目をより自然な姿にすることが可能.


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