講座 整合回路の基礎[I]――LC/CL整合回路――

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Vol.108 No.12 (2025/12) 目次へ

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講座

整合回路の基礎[Ⅰ]

――LC/CL整合回路――

An Introduction to Matching Circuit Fundamentals[Ⅰ]: Basic LC/CL Matching Networks

田中 聡

田中 聡 正員:フェロー 広島大学大学院先進理工系科学研究科量子物質科学プログラム

Satoshi TANAKA, Fellow (Graduate School of Advanced Science and Engineering, Hiroshima University, Higashihiroshima-shi, 739-8530 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.108 No.12 pp.1205-1210 2025年12月

©2025 電子情報通信学会

目    次

[Ⅰ]LC/CL整合回路

[Ⅱ]π形整合回路

[Ⅲ・完]多段整合回路

1.は じ め に

 整合回路は,高周波回路における基本的かつ代表的な回路の一つである.整合回路は,増幅器のトランジスタと入出力の標準インピーダンス(一般に50math)との間のインピーダンス変換をはじめとして,複数段から構成される増幅器における段間整合,更には合分波回路におけるインピーダンス変換など,様々な応用が存在する.整合回路の研究と応用には長い歴史があり,優れた教科書や参考文献も多数刊行されている(1)(3).本稿では,初学者の理解を助けることを目的として,L(インダクタ)及びC(キャパシタ)による整合回路,更には伝送線路による整合回路について,なるべく専門的な知識を必要とせず基本的な動作原理が理解できるよう,数回にわたって解説を行う予定である.第1回となる今回は,「整合」とは何を意味するのか,そして整合回路の基本であるLC整合及びCL整合回路について紹介する.

2.整 合 条 件

 整合が取れている状態とは信号源インピーダンスと負荷インピーダンスが複素共役の関係にある状態を示す.このとき負荷に伝達される電力が最大となる.簡単な事例として,図1(a)に示す回路で説明する.信号源は電圧源mathと直列抵抗mathで構成し,負荷を抵抗mathで示す.負荷に伝わる電力mathは以下の式で与えられる.

math

(1)

 ここで具体的にmathmathとするとmathのとき,つまりmathが成立するときにmathは最高の1Wとなる.図2にはmathを0.1~10mathの範囲で変化させたときのmathの変化を示す.mathが1mathよりも大きくても小さくてもmathは減少することが分かる.

図1 信号源抵抗と負荷抵抗の整合  (a)信号源と負荷抵抗を直結,(b)信号源と負荷抵抗の間に整合回路を挿入.

図2 RLを変化させた場合のPLの変化  RL=1Wのとき最大となる.

 整合の指標としては反射係数mathmathの絶対値の対数表示であるリターンロス(dB表示),電圧定在波比(VSWR)がよく用いられる.今後よく用いる指標であるためここで復習しておく.信号源側から負荷側に伝わる入射波の電圧をmath,電流をmath,また,負荷側から信号源側に伝搬する反射波の電圧をmath,電流をmathとする.ここで反射係数mathを以下のように定義する.


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