講演 日本の研究力を再生する――制度・人材・国際化からの改革提言:電子情報通信学会総合大会2025企画セッション「日本の研究力を復活させるためには何をすべきか(TK-5)」報告とアジェンダ――

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講演 日本の研究力を再生する――制度・人材・国際化からの改革提言:電子情報通信学会総合大会2025企画セッション「日本の研究力を復活させるためには何をすべきか(TK-5)」報告とアジェンダ―― Revitalizing Japan’s Research Capacity:Reform Proposals from the Perspectives of Systems, Human Resources, and Internationalization; Reports and Agenda from The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers General Conference Session 塩本公平

塩本公平 正員:フェロー 東京都市大学情報工学部知能情報工学科

Kohei SHIOMOTO, Fellow (Faculty of Information Technology, Tokyo City University, Tokyo, 158-8557 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.108 No.12 pp.1211-1217 2025年12月

©2025 電子情報通信学会

1.は じ め に

 日本の科学技術を支える研究基盤が,今,重大な転換点を迎えている.近年,国際的な調査において,日本の論文数や引用数,研究の国際的影響力がいずれも低下傾向を示しており,OECD諸国の中でも日本の研究力は後退を続けている.実際に,世界の高被引用論文数の国別ランキングで日本はかつての6位から13位に転落したという指摘もある.

 こうした現状を受け,電子情報通信学会2025年総合大会では,「日本の研究力を復活させるためには何をすべきか」と題した企画セッション(TK-5)が開催された(図1).本セッションでは,研究開発資金,若手支援,博士課程教育,国際化,研究支援体制など,研究力低下の背景にある複数の課題について,様々な立場からの議論が行われた.

図1 電子情報通信学会2025年総合大会企画セッション(TK-5)「日本の研究力を復活させるためには何をすべきか」SNS広報

 本稿では,本セッションでの議論を整理・要約するとともに,日本の研究力復活に向けた具体的な方策について検討する.研究環境の構造を根本から見直し,「人材」「資金」「制度」「支援体制」という四つの柱から,現実的かつ挑戦的な方策を検討したい.

2.セッション報告:多様な視点からの現状分析

 本企画セッションでは,日本の研究力復活に向けて,論文数や研究費などの指標を分析し,国際競争力の再生を目指す議論が展開された.質的強化には,十分な研究費の確保,海外研究者の獲得,日本人研究者の国際化,研究に専念できる環境の整備,そして博士課程学生の増加が不可欠である.本章では,各講演者の発表内容を基に,現状の課題と今後に向けた示唆を整理する.

2.1 研究力低下の実態と統計的根拠

 文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の富澤宏之氏は,日本の研究力が長期的かつ構造的に低下している実態を,多角的な統計データに基づいて分析した.中でも注目されたのは,高被引用論文(Top 10%)の発表数における日本の国際順位であり,かつて世界第6位にあった日本は,2020年代には13位にまで後退している.中国や韓国などアジア諸国が台頭する中で,日本の研究プレゼンスが相対的に低下していることが浮き彫りとなった.

 研究費に関する国際比較も,日本の課題を如実に示している.富澤氏の講演を受け,筆者が米国「NSF by the Numbers」ダッシュボードを参照して調査したところ,2024年度に新規採択されたNSF助成金の総額は約84億ドル(8,429.42M USD),採択件数は10,592件であり,1件当りの平均額は約80万ドル(0.796M USD)に達する.これは,日本の競争的研究費の水準を大きく上回っており,研究者一人当りの資源投入額において顕著な格差が存在する.仮にポスドクの年間雇用コストを8万ドルとすれば,NSFの1件の助成金で平均10人年のポスドクを雇用可能となる.これは,若手研究者が研究経験を蓄積し,アカデミアに進む,あるいは産業界でイノベーションを担う人材として成長するための土壌が,制度的に整っていることを意味する.

 こうした構造的な違いに加え,日本では博士課程進学者の減少,若手研究者のキャリア不安,研究支援体制の不備といった複数の課題が複雑に絡み合っている.富澤氏は,これらの課題を単なる「数値の低下」としてではなく,日本の「知的基盤の地盤沈下」として深刻に受け止め,早急な対応が必要であると強調した.


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