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1.サイバーフィジカルシステムの要素技術と産業応用(日本機械学会連携企画)
小特集 1-5
CPSが切り開く人と機械の新たな関係
New Human-Machine Interaction Opened by CPS
アフターコロナの世界では,生活,働き方,娯楽に至るまで,あらゆる人間活動の価値観が変わり,AIを含む機械との付き合い方も激変した.Chips for America,ディジタルプロダクトパスポートなどの各国の自国保護政策の台頭,サイバーセキュリティのみならずサプライチェーンセキュリティの必要性の拡大,コロナ禍時代で更に伸長した電子商取引と配送業のひっ迫など,枚挙にいとまがない.その中で,生成AIの応用が各国各産業で試みられ,それを支えるデータセンターの需要がひっ迫し,更にそれを支えるエネルギー需要も更にひっ迫しようとしている.本稿では特に製造業におけるCPSを応用した人と機械の新たな関係に関する課題を論じる.
日本では少子高齢化が製造業の産業力低下の主因であると言う論調が見かけられるが,米国その他の国ではその論調が少し異なる様相のようである.産業力を支える労働の観点から見たとき,そのインセンティブについて着目すると,総務省統計局が発行している産業別常用労働者1人平均月間現金給与額(令和4年)(1)によると,製造業の平均給与はIT産業などと比較して約半分の給与となっている.米国でも似たような状況となっており,給料や賃金など魅力あるインセンティブが他の産業と比べて低いと,ケーパビリティが低い労働力しか集まらなくなり,産業力が低下しているとの論調である.
その中で,製造業の労働生産性を見ると,図1(2)に示すように,日本も米国もドイツも2010年頃まではある程度線形的に労働生産性が増加していたものが,それ以降は停滞していることが分かる.2010年前後の変曲点はリーマンショックによる世界経済の停滞が関係すると思われるが,それを境に停滞しているということは,こういった経済的要因だけでなく,オフショアリングなどの従来の生産形態が通用しなくなってきていること,地政学リスクも絡み合っていること,など様々な要因が絡んでいるように思われる.
特に本稿の視点で注目すべきなのは,Industry 4.0やSociety 5.0など,社会のディジタル施策が2014年前後から世界的に投資されてきたにもかかわらず,少なくとも製造業の労働生産性には相関が見られないことである.これがなぜか,CPSはどうすれば真に社会貢献できるのか,議論することは重要な課題である.
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