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ICT による農業のスマート化
小特集 1.
ICT導入による農業の持続可能な生産性の向上のためのスマート化への期待
Expectations of Smartification for Improving Sustainable Agricultural Productivity by Introducing ICT
Abstract
日本及び世界の農業における課題を概観した上で,農業生産活動が起因している地球環境劣化等の問題点について述べ,その問題解決に有用だと期待されるICT(Information and Communication Technology,情報通信技術)について述べる.次いで,生物生産空間内外における諸変数の相互関係について概観した上で,生物生産空間の開放度による分類と持続可能な土地生産性の向上方策について考察する.最後に,閉鎖型生物生産施設による持続可能な生産性の向上に関する今後の研究開発課題をICTとの関連で考察する.
キーワード:農業スマート化,情報通信技術,植物工場,持続可能性,環境
農業は広義には水産業,林業等を含むが,本稿では,狭義の農業である,耕種農業(作物生産業),畜産業,観光農業等のうち,耕種農業を主対象にする.ただし,農業では農産物生産だけでなく,その多面的機能(防災・環境保全,景観,生活圏,文化等)への考慮が重要である.ICT(Information and Communication Technology,情報通信技術)は,IoT(Internet of Things)及びAI(Artificial Intelligence,人工知能)との関連を含めて必須になりつつあるが,2025年現在,農業全般におけるICTの普及範囲とレベルは不十分な面が多い.本稿では,ICTの非専門家の立場から,農業が直面している課題を述べ,その課題解決へのICT導入によるスマート化への期待と問題点を,review paper(総説)としてではなく,perspective paper(展望)として論じる.
日本及び世界において解決が期待されている農業に関する課題例を表1に示す.表1に示した課題は,地球全体及び地域における①環境・生態系の劣化,②非生物資源(化石燃料,水,肥料製造用鉱石等)の不足と偏在,③社会・経済・生活の質の向上に関する課題と関連している.その背景の下で,表1の複数の課題を,ICTの導入により持続可能な生産性向上を図りつつも,他の課題の同時並行解決にも貢献する方策を議論することが本稿の主題である.
表1に示した課題4~9は,表2に示した地球環境の劣化あるいは持続可能性の直接的または間接的な低下の主要因である.これらの課題解決にICTが貢献する余地は大きい.特に,非生物系天然資源の枯渇下での農産物1kg当りのCO2排出量(より一般的には地球温暖化ガス,表2参照)削減が重要である.化石燃料由来の化学肥料,農薬及びプラスチック製品の過多な使用は,CO2排出量を増やすだけでなく,海洋・湖沼や土壌の酸性化や富栄養化をもたらす.これらの個別問題解決にもICT導入は貢献し得る.
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