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ICT による農業のスマート化
小特集 2.
月面植物工場と自動化ドローンシステムの実現
Developing a Lunar Plant Facility and Automated Drone System
Abstract
アルテミス計画を含む,月面での居住を目指す計画が進行中である.宇宙での生活を持続可能にするためには,地球上で当たり前に享受してきた衣食住を宇宙でも実現する必要がある.しかし,地球上で豊富に利用できる資源の多くは宇宙では利用できないため科学技術を駆使して居住環境を構築することが不可欠となる.我々は,月面や宇宙での居住環境を実現するための植物工場用ロボット(ドローンなど)とその制御に必要な通信技術の研究開発を進めている.本稿では将来の展望に焦点を当てつつ宇宙居住環境を実現するための技術の一端としての研究成果を紹介する.
キーワード:月面居住,ドローン,受粉システム,植物工場
現在,JAXAやNASAなどが進めている月面基地での永続的な人類の居住計画(1),(2)には,食料の持続的な確保が極めて重要であり,その実現のためには,図1に示すような月面探査ハブやISSなどの宇宙ステーションの運用が計画されている.月面探査ハブの施設では,月の地質,地形,資源などの詳細な調査や資源利用技術を開発し,将来の火星探査や他の深宇宙探査に向けた準備なども目的とされている.このような調査・探査のための施設は,月面で長期滞在するための作物の栽培実験と,生活/生命を維持のするための作物を生産する植物工場なども含まれる.植物工場の運営は,限られた少ない居住者であることが予想されるため,農作業のための人の稼働は難しく,ロボットなどの機械による自動化が不可欠である.
月面居住のための植物工場を実現するために,図2に示す物理空間と仮想空間が連携したディジタルツインシステムを提案する.このシステムでは,主にディジタルツインに適した制御手法と通信手法を提案し,ドローンやロボットによる農作業の実現を目指す.このシステムの動作アルゴリズムは,物理空間において,観測用カメラによる作物の状態画像だけでなく,ドローンやロボットの状態や測位結果の情報(座標)などを常に最新の情報として取得する.また,その他の情報取得として,植物工場内に設置されたIoTセンサからの温湿度,作物周辺の光量値情報などや,ドローンやロボットが移動しながら周囲の障害物を含む三次元的な空間構造/環境データを収集する.仮想空間では,これらの情報を受け取り,障害物の検出や実際の移動先の座標,栽培に適したドローンやロボット作業方法の解析を行う.その後,解析結果を出力し,物理空間のドローンやロボットなどに対し,次の飛行・移動制御や作業動作を指示する.物理空間での情報収集と仮想空間での解析は,ドローンやロボットに対し,相互にサイクル化されたフィードバックによって,常に作物の成長と栽培過程に合わせた最適化運用を実現する.
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