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ICTによる農業のスマート化
小特集 3.
月面農場の実現に向けたICTの活用
Use of ICT for Realization of Lunar Farm
Abstract
月面農業は,持続可能な月面探査を支える重要な技術である.月面という特殊な環境に対応するためには,ICT(情報通信技術)やバイオテクノロジー,ロボティクス等の先端技術が鍵となる.例えばセンサ等で取得した作物の生育状況を解析し,栽培環境をリアルタイムで制御することで作物にとって良い環境を作り出し,更にロボットを活用した自動化技術により効率的な農業が可能となる.また,遺伝子編集技術を用いた収穫量や栄養素の最大化及び耐環境作物の開発も進行中である.これらの技術は月面農業のみならず地球上でも応用可能で,食料問題や環境問題の解決にも寄与する.
キーワード:月面農場,月面食料生産システム,閉鎖循環システム,スマート農業
近年,宇宙開発は急速な進展を遂げており,特に月面や火星での長期的な人類の居住や探査ミッションが現実味を帯びてきている.これらの計画において,食料供給の確保は最も重要な課題の一つである.現在の宇宙ミッションでは,地球からの物資補給に依存しているが,長期的な視点で見ると,これは持続的とは言えない.特に,宇宙探査の次なるステップとして月面での有人探査が進められる中で,現地で食料を生産する「月面農場」の技術開発が重要視されている(図1).
月面での農業は,持続可能な宇宙探査や長期滞在計画において,食料を自給する手段として欠かせない.地球からの物資補給を減らすことで,探査ミッションのコストやリスクを低減し,長期的な宇宙滞在を可能にする.また,月面農業の技術開発は,地球上でも応用可能な技術の進展を促進する可能性があり,極限環境下での食料生産やエネルギー効率化に関する研究に貢献するかもしれない.このように,月面農業の実現は,人類の宇宙進出を支える技術として重要な役割を果たす.
月面での持続可能な食料生産を実現するためには,地球とは異なる特殊な環境下で作物を効率的に栽培する技術が求められる.月面の低重力や高い放射線環境,水をはじめとした各種リソースが限定される状況は,農業に適した環境とは言えない条件がそろっている.こうした制約に対処するために,最新のICT(情報通信技術)が活用されることが期待されている.
ICTは,作物の生育環境をリアルタイムで監視し,効率的に管理するための技術を提供する.これにより,気温,湿度,光量,二酸化炭素濃度などを最適に制御し,作物の生産性を最大限に引き出すことが可能である.また,遠隔操作や自動化技術の導入により,人間の労働を最小限に抑えつつ,農作業を効率化することができる.このように,月面農業はICT技術を活用することで,持続可能な食料供給の実現に向けて大きな可能性を秘めている.
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