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ネットワークの数理モデル
小特集 1.
次世代通信技術とグラフ・ネットワーク理論
Next-generation Communication and Graph/Network Theory
Abstract
グラフ・ネットワークは,点と辺から成る構造であるが,そのデザイン性から様々な場面で使われている.例えば,電子情報通信学会のホームページの背景にグラフが現れたりする.このように,様々な場面にグラフ・ネットワークが見られる.グラフ理論は,インターネットが世に出る前から,主に離散数学の分野で研究され,工学系でも電気回路をモデル化できることから,回路関係の研究者にも研究されていた.このように多くの分野で研究されてきているグラフ・ネットワーク理論を,本稿では通信に限定し,主に無線通信におけるチャネル割当への応用のこれまでとこれからについて言及する.
キーワード:次世代通信,グラフ理論,グラフの点彩色,色数の最小値と最大値
本稿では,点と辺から成る構造をグラフと言い,点や辺に,何らかの重みの付いたものをネットワークと呼ぶこととする.工学系や情報系でネットワークが出てくる代表的な問題は,最短路問題であろう.アルゴリズムに関する様々な教科書で,最短路問題が扱われ,ダイクストラのアルゴリズム(1)が紹介されている.最短路問題の応用として,カーナビゲーションシステムを紹介するのもよく見られる.グラフにモデル化した場合,辺の重みは距離であり,2地点間の最短経路を求めることになる.通信への応用としては,グラフをLANやWANのモデルとし,辺の重みを遅延時間として,2点間の最短の遅延時間を求める,という授業を実際私もしている.ただ,よく考えると,単に通信上の遅延であれば,辺でモデル化した通信路内を情報が流れることになるので,光ファイバなら光速を仮定すればよい.辺の長さに比例した遅延は起こるが,それより経由するノードの通過による遅延の方がはるかに大きい.各2点間の経路で,経由する点がなるべく少なくなるグラフの構造について,国立情報学研究所が開催したGraph Golfと呼ばれるコンテストがある(2).このように,通信のモデルとして,辺のみに重みの付いたネットワークで遅延を扱うのは,慎重であるべきであろう.
ここで押さえておきたいのは,「何となくグラフの応用として使える問題だろう」と「本当にグラフでモデル化することが有用である」の間には,かい離があることである.先にグラフ理論は離散数学分野で研究されてきたと述べたが,その応用例として,例えば離散数学におけるグラフ彩色の論文内に,「この研究は,移動通信におけるチャネル割当に応用可能である」と書いただけでは,本当に使えるのか,とりあえず応用分野を書いているのかが不明である.後者の意味であることが多い印象があるが,私も使っていたりするので,自戒の意味も込めて書いている.
さて,本稿では,次世代に向けた通信技術とグラフ・ネットワーク理論について,無線通信のサービスエリアの設置に関する考察とそこで使用するチャネルの割当とそのモデル化について言及する.なお本稿は,文献(3)の通信技術とグラフ・ネットワーク理論の解説記事の続きとなる性格を持っており,合わせて御一読頂ければ幸いである.
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