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国際標準化活動という仕事とその魅力[Ⅱ]
――システム及びソフトウェア品質の国際標準化に携わって――

The Work and Appeal of International Standardization[Ⅱ]: What I Learned through International Standardization of Systems and Software Quality

込山俊博

込山俊博 正員 日本電気株式会社ソフトウェア&システムエンジニアリング統括部

Toshihiro KOMIYAMA, Member (Software and System Engineering Department, NEC Corporation, Tokyo, 108-8001 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.108 No.3 pp.265-269 2025年3月

©2025 電子情報通信学会


目    次

[Ⅰ]IEEE 802での標準化について(2月号)

[Ⅱ]システム及びソフトウェア品質の国際標準化に携わって(3月号)

[Ⅲ・完]スマートフォンによる通信を支える3GPPという国際標準化プロジェクト(4月号)

1.は じ め に

 AI,クラウド,IoTなどのディジタル技術の進化と活用が進み,国や企業の境を越えてシステムがつながり,システム間の情報交換が日常的に行われる今日,システム及びシステムに組み込まれたソフトウェアの品質に関する国際的な標準を制定し,適合を促進することが,開発するシステムの互換性・相互接続性の確保,利用者の安全・安心など,系全体としての品質を保証する上で極めて重要である.

 ISO/IEC JTC 1 SC 7/WG 6(注1)(Software Product and System Quality)では,設立当初から日本が主導して,ソフトウェア製品及びソフトウェアを中心とするシステムの品質に関する国際標準化を進めている.本稿では,この作業部会のセクレタリを経て,現在コンビーナを務めている筆者の経験に基づき,本分野における国際標準化の意義,現状,苦楽などを伝えたいと思う.

2.システム及びソフトウェア品質の国際標準化

2.1 国際標準化の意義

 世の中には,唯一無二の普遍的な解はないが,一定の取り決めを作り,広く受け入れることで,製造者,利用者などの利害関係者が利便,利得を得られる事柄がある.ねじの長さやピッチなどを思い浮かべると分かりやすいであろう.これはシステム及びソフトウェア品質の領域にも当てはまる.例えば,信頼性,ユーザビリティなどの品質特性について,同じ概念に異なる名称を充てたり,同じ名称の特性に異なる定義を与えたりすると,品質要件の合意形成などに支障を来すであろう.また,ある特性を評価するための測定量(メジャー)や基準が曖昧であれば,良し悪しを判断することは困難となろう.

2.2 ISO/IEC 25000 SQuaRE(注2)ファミリー

 システム及びソフトウェアに求められる品質には,要求される機能を充足し,誤動作を起こさないことに加え,操作性,処理速度,セキュリティなどが重視されることがあるだろう.システム及びソフトウェアの品質管理においては,品質の特性を多角的観点から規定し,それらを客観的に評価できるようにすることが重要である.そのためには,品質特性の構造,及び各特性の測定方法を標準化することが有効である.品質特性の構造を規定する品質モデル(1)(図1)の国際標準化の作業は,日本からの提案によって,1985年にISO/TC 97/SC 7/WG 3で開始された.1991年に審議の場をISO/IEC JTC 1/SC 7/WG 6に移し,品質モデルに基づく品質の測定,要求定義,評価など作業範囲を拡大するとともに,システム形態の変化や情報技術の進化を考慮した既発行国際規格の改訂を重ねて,現在のシステム及びソフトウェア品質の要求定義と評価に関する国際規格群ISO/IEC 25000 SQuaREファミリー(2)に至っている.図2がその全体像である.なお,制定された国際規格は随時翻訳されJIS(注3)規格として発行されている.


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