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ロボット介護機器の展開に向けた環境整備
小特集 1.
ロボット介護機器の環境整備の取組み
Support Initiatives in Development and Utilization of Robotic Devices for Nursing Care
「2040年問題」として知られるような国内の人口構成の変化に起因する社会課題は,高齢者人口の増加に対して生産年齢人口が不足することが主要因である.すなわち,高齢者の数が増え,それに伴い介護が必要な人も増えることが予測されている状況において,介護行為を行う人材が不足すると考えられている.例えば「2040年問題」では,戦後の復興の中で第一次ベビーブーム期(1947年~1949年)に生まれた団塊世代と呼ばれる世代は,他の世代よりも人口比率が高い.その子供たちの世代も第二次ベビーブーム期(1971年~1974年)と呼ばれ,そこで生まれた団塊ジュニアと呼ばれる世代が2040年に65歳以上の高齢者となる.この結果,高齢者人口が急激に増加し,全人口に対する高齢者の割合がピークに達すると推計されており,それに伴う介護提供側の人材不足が懸念されている.
このような社会課題に対し,高齢者を支える持続可能な社会システムを実現するために,介護分野における生産性の向上により,より少ない介護提供側の人口で,より多くの高齢者に対するケアを提供しようとする試みが行われている(1).介護業務の見直し(業務改善)による効率化はもとより,ロボット技術やセンサ,情報技術等の活用が期待され,開発事業者に対する開発支援や,介護事業者側への導入支援など,多面的な支援が行われてきた.そこでは,単に介護現場での生産性向上のためだけにロボット等を活用するのではなく,高齢者の自立を支援し,自分でできることを増やすことによって必要な介護行為の種類や量を減らすことや,介護者の負担を軽減したり,やりがいを向上させたりすることで離職を防ぐことなども考慮されている.
2012年7月31日に閣議決定された日本再生戦略の中では,重点施策の一つとして「ロボット技術の介護分野での利用」が掲げられた.更に同年11月には厚生労働省と経済産業省の連名で「ロボット技術の介護利用における重点分野」が策定された(2).
このような政策的な動きを受けて,重点分野を主なターゲットとして,新たなロボット介護機器などの開発を促進しようとする事業が行われるようになった.例えば2013年度~2017年度のAMEDロボット介護機器開発・導入促進事業(5年)や,それに続く2018年度~2020年度のAMEDロボット介護機器開発・標準化事業(3年)では,重点分野でのロボット介護機器開発を行う事業者への支援を行う開発補助事業と並行して,開発に必要な基準等を整備する基準策定評価事業も実施された.開発時の安全性確保について解説する安全ハンドブックや,人を対象とする評価を実施する際に必要な倫理審査申請の準備を支援するガイドラインなどが作成されて介護ロボットポータルサイトにて公開されている(3).また,これらの活動を通じて多くのロボット介護機器が開発され製品化されており,製品化されたロボット介護機器のリストも前述のポータルサイトにて公開されている.
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