小特集 3. ロボット介護機器の海外展開を目指した企業向けの臨床評価ガイダンス

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ロボット介護機器の展開に向けた環境整備

小特集 3.

ロボット介護機器の海外展開を目指した企業向けの臨床評価ガイダンス

Clinical Evaluation Guidance for Overseas Expansion of Robot Devices for Nursing Care

大畑光司

大畑光司 北陸大学健康未来社会実装センター

Koji OHATA, Nonmember (Innovation of Healthcare Center, Hokuriku University, Kanazawa-shi, 920-1180 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.108 No.4 pp.312-317 2025年4月

©2025 電子情報通信学会

Abstract

 AMED事業のロボット介護機器開発等推進事業(環境整備)の中で進めてきたロボット介護機器の海外展開を目指した企業向けの臨床評価ガイダンスについて解説する.本ガイダンスは,医療機器と介護機器の定義の違い,臨床評価の作成プロセス,認証取得のための臨床研究に求められる注意事項をまとめたものである.本ガイダンスの特徴は実際にロボット介護機器の臨床研究を行う際に生じた問題に則して作成しており,海外展開を目指す企業における臨床評価の作成に役立てることを目的としている.

キーワード:ロボット介護機器,海外展開,臨床評価,臨床研究

1.海外展開のための臨床評価ガイダンスの作成

 人口減少社会が進む我が国において,今後も介護人材の不足という社会課題が継続することが予想される.このため,高齢者の自立を支援し,質の高い介護を提供するためにICTや介護ロボットなどの新技術の導入による生産性向上に向けた取組みが数多くなされている.これらの新技術は国内だけでなく,これから高齢化に直面する海外でも役立つと考えられ,今後のロボット介護機器などの海外展開が期待されている.

 ロボット介護機器を海外に展開する上で大きな障壁となると考えられるのが,医療機器に課される臨床評価である.我が国において,介護機器は医療機器として扱われないため臨床評価が課されないが,多くの国ではロボット介護機器も医療機器の一種であるとされ,臨床評価が求められることがある.このことがロボット介護機器の開発企業に海外展開を躊躇させる一因となっている.

 そこで我々は,ロボット介護機器を海外展開する環境を整備するために国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)のロボット介護機器開発等推進事業(環境整備)として「ロボット介護機器開発者に向けた海外展開のための臨床評価ガイダンス」を作成した(1),(2).本ガイダンスは,ロボット介護機器等のうち,海外での販売等を目指す製品について,欧州での認証取得を例として,必要な臨床評価の手続きやロボット介護機器における注意点を整理したものである.本ガイダンスにおける基本的な考え方は欧州に限らず,他の国にも共通するため,幅広く参考にすることができる.

2.医療機器と介護機器

2.1 定義

 本ガイダンスでは,まず国内における医療機器と介護機器の違いと,海外における医療機器の定義について説明している.国内において医療機器は,「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」において,「人若しくは動物の疾病の診断,治療若しくは予防に使用されること,又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等であって,政令で定めるもの」と定義付けられている.一方で介護機器や福祉機器は「福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律(福祉用具法)」において,「心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障のある老人又は心身障害者の日常生活上の便宜を図るための用具及びこれらの者の機能訓練のための用具並びに補装具」とされている.したがって,疾病の診断,治療若しくは予防などの医療行為に該当する機器は医療機器,日常生活の支援などに使用される機器は介護・福祉機器とみなされる.


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