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解説
時分割アレーアンテナを用いたミリ波Massive MIMO
Millimeter-wave Massive MIMO Using Time-division Phased Array Antennas
A bstract
5Gや衛星通信では,高速・大容量通信を実現するために,広い周波数帯を活用可能なミリ波帯で,同じ周波数を用いて異なるデータを空間的に多重伝送するMIMO技術が導入されている.一方,6Gに向けたミリ波通信の普及や,近年注目されている小形の低軌道衛星向けには,ミリ波MIMO装置を小形・低消費電力に実装することが重要な課題になっている.本稿では,ミリ波帯におけるMIMOによる空間多重通信の実現に向けた背景や,技術課題を解説する.また,その課題を解決するために,新たな時分割MIMO方式を提案し,基本動作を実証する.
キーワード:ミリ波,MIMO,ビームフォーミング,6G,衛星通信
第5世代移動通信システム(5G)では,高速・大容量通信を実現するために,Massive MIMO(Multiple Input Multiple Output)とミリ波通信の二つの新しい技術が導入された.これらの技術は,6Gにおいても引き続き重要な技術に位置付けられている.MIMOは,多数のアンテナを用いて,同じ周波数で複数のデータを空間多重伝送することにより,周波数利用効率を高める技術である.5GでFR1として定義されたマイクロ波帯(サブ6GHzと呼ぶ)では,マルチユーザMIMOとして既に実用化されている.一方,FR2として定義されたミリ波帯(24.25~71GHz)では,広い周波数帯域を利用することにより,高速通信を実現する.これら二つの技術において,基盤技術となるのがフェイズドアレーを用いたビームフォーミング(BF:Beamforming)である(1).MIMOでは,複数データの空間多重と分離にビームフォーミング技術を用いる.ミリ波通信では,伝搬損が大きいため,ビームフォーミングにより電波のエネルギーを特定の方向に集中することによって,通信距離を延ばしている.このように,基盤技術が共通することから,ミリ波の広帯域を利用してMIMOによる空間多重伝送を行い,更なる大容量通信を実現することが期待されるが,装置の小形化や低消費電力化が難しく,5Gでは,一般には実用化されていないのが現状である.
本稿では,ミリ波帯で,MIMOを用いた空間多重(マルチビーム)通信を行う背景や技術課題を解説する.また,その課題を解決する新たな時分割MIMO方式を提案し,基本動作を実証する.
ミリ波マルチビーム通信の代表的なユースケースとしては,移動通信と衛星通信が挙げられる.図1(a)は移動通信の例である.マルチユーザMIMOでは,1台の無線ユニットが同じ周波数を使って,複数のユーザと同時に通信を行う.また,6Gに向けては,分散配置された複数の小形無線ユニットから,異なるデータを1台のユーザ端末で受信する分散MIMOも検討されている(2).こうした5G機器では,設置スペースの制約や,環境負荷低減の観点から,小形・低消費電力が強く求められている.
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