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Harmonic Reaction Begins with Simple LC Resonance
放送や通信に用いられる電力増幅器の性能を向上する有力な手段として「高調波処理」がある(1)~(3).また近年ではワイヤレス給電用インバータなどパワエレ分野でも高調波処理の活躍が期待される(4)~(6).高調波とは所望波の2倍,3倍,……の周波数を持つ,本来は無用の副産物であり,トランジスタなどの非線形素子から生じる.この高調波を何らかの方法でリサイクルし,そのエネルギーを有効活用することで究極の電力効率を達成する巧みな技が高調波処理である.
高調波処理を学ぶ際には能動素子が当然のごとく登場するので入門者に苦手意識を誘起しがちである.そこを何とか分かりやすく説明する方法はないだろうか.実は幸いにして,LC共振+ダイオードというシンプルな受動系でも立派に高調波処理が成立する(7)~(12).本稿では,整流回路に共振素子を前置する基本例を挙げ,動作原理を紙と鉛筆で追う.電圧と電流がどのように振る舞うのかを手計算と波形グラフで捉えることで高調波処理の理解の第一歩とする.
交流を直流に電力変換する機能を整流と呼ぶ.整流回路のブロック構成を図1(a)に示す.左側ポートから入力された高周波(RF)を直流(DC)に変換し右側ポートへ出力する.整流回路はダイオードなど非線形素子を含むので所望のDCに加えて回路内部で高調波(入力RFの整数倍の周波数)成分が生じる.もしこれら高調波がRFポートを介して外部へ流出すると,それが電力損となる.また外部システムへの与干渉の要因にもなり厄介である.
そこで対策として同図(b)に示すようにRF入力ポートにLC素子から成るリアクタを前置する.これにより高調波が選択的に反射されダイオードに戻る.戻ったエネルギーを整流動作にうまく利活用することでRFからDCへの電力変換効率を向上させる.これがRF整流における高調波処理の仕組みである.具体的な回路構成を次章で述べる.
基本的な整流回路の例としてシングル並列形ダイオード整流回路を図2(a)に示す.構成要素は三つの受動素子
① DCブロックコンデンサ
② 並列ダイオード
③ RFチョークコイル
である.下添字はLC値が十分大きいことを意味する.本回路の主役は
である.入力されたRFが
によってDCに変換される.
はDCが左側へ戻らないようせき止める脇役,
はRFが無駄に右側へ漏れないように閉塞する脇役である.
もう一つの例としてシングル直列形ダイオード整流回路を同図(b)に示す.この回路は振幅変調波の検波回路としてAMラジオなどに広く用いられている(13)~(15).回路図(a),(b)を見比べると互いに双対(用語) (9)~(12)の関係となっていることが分かる.
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