特集 7. ネットワークの強じん性を高める高信頼化設計技術

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Vol.108 No.5 (2025/5) 目次へ

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通信インフラの災害時対応及び防災・減災に向けた通信技術
――令和6年能登半島地震を風化させないために――

特集

ネットワークの強じん性を高める高信頼化設計技術

High Reliability Design Technology for Network Resilience

松川達哉 松浦 洋 中川雅弘 越地弘順 林 理恵

松川達哉 正員 日本電信電話株式会社NTTネットワークサービスシステム研究所

松浦 洋 正員 日本電信電話株式会社NTTネットワークサービスシステム研究所

中川雅弘 正員:シニア会員 日本電信電話株式会社NTTネットワークサービスシステム研究所

越地弘順 正員 日本電信電話株式会社NTTネットワークサービスシステム研究所

林 理恵 正員 日本電信電話株式会社NTTネットワークサービスシステム研究所

Tatsuya MATSUKAWA, Hiroshi MATSUURA, Kohjun KOSHIJI, Rie HAYASHI, Members, and Masahiro NAKAGAWA, Senior Member (NTT Network Service Systems Laboratories, NIPPON TELEGRAPH AND TELEPHONE CORPORATION, Musashino-shi, 180-8585 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.108 No.5 pp.456-463 2025年5月

©2025 電子情報通信学会

abstract

 障害や災害の発生に対応して通信ネットワークの信頼性を高めるための設計技術がこれまで検討されてきた.通信障害の影響を極力小さくするためのネットワークの高信頼化についてこれまでも検討されてきたが,障害の大規模化や災害の広域化,サービスの多様化に対応して更なるネットワークの高信頼化が重要となっている.本稿では,光パスネットワークを対象として災害や障害の影響を軽減するための高信頼化設計技術について高信頼な現用・予備経路の探索方法とマルチバンドネットワークに対するパスプロテクションの高効率化を実現する方式について説明する.

キーワード:高信頼化設計,SRLG,マルチバンドネットワーク,パスプロテクション

1.は じ め に

 災害や障害の発生に備えて通信ネットワークの信頼性を高めるための設計技術がこれまで検討されてきた.通信ネットワークの社会インフラ化が進む中で,広域に及ぶ災害や大規模な通信障害の影響は深刻化しており,ネットワークの高信頼化設計はますます重要となっている.本稿では,災害や障害の影響を軽減するための高信頼化設計技術を述べる.2.ではネットワークの高信頼化設計の概要と光パスネットワークとしての高信頼化について説明する.そして,3.では光パスネットワークの物理的構成としての信頼性を高めるための経路選択技術について,4.では伝送レイヤにおけるバンド帯の選択による冗長化リソースの効率化について説明する.高信頼な現用/予備経路の選択と各経路に割り当てる最適なバンド帯の選択によって,光パスネットワークの信頼性と効率性を両立させる.

2.ネットワークの高信頼化設計

 通信ネットワークの信頼性を高めるために,故障や災害の内容や要因,影響の大きさに応じた高信頼化方式や冗長化方式が検討されてきた(図1).限られたリソースの中でネットワークの冗長性や回復性を高めることで,サービスとしての信頼性を継続的に向上することが重要である.特に伝送ネットワークは,各種ネットワークサービスの基盤となるためサービスやユーザの収容規模が大きく,信頼性に対する要求条件が高い.運用中に発生した障害の影響を極力小さくするために設計段階における高信頼化が重要である.

図1 故障要因と高信頼化対策の関係の例

2.1 光パスネットワークの高信頼化

 通信ネットワークにおいて,高速・大容量,低遅延に対する要求条件が高まる中で,光伝送ネットワークの技術は著しく発展してきている.伝送ネットワークの大容量化に加え,伝送距離の長延化,伝送システムの高信頼化が進んでいる.伝送距離の長延化が進むことで,光伝送ネットワークにおいてルータ等の電気処理が必要な装置の配備を最小限とし,電気処理に伴う遅延時間や消費電力を削減することができる.結果的に電気処理が必要な装置数,経由数を減らすことによって,故障の発生頻度自体を削減することが可能となる.


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