小特集 1. 宇宙用部品に求められる信頼性と宇宙用MPUの開発

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宇宙で使っても壊れないハードウェア開発の最前線

小特集 1.

宇宙用部品に求められる信頼性と宇宙用MPUの開発

Requirements for Electronic Components in Space Applications and Development of High Reliability MPU

土屋佑太 根本規生 廣瀬和之

土屋佑太 根本規生 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構研究開発部門

廣瀬和之 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所

Yuta TSUCHIYA, Norio NEMOTO, Nonmembers (Research and Development Directorate, Japan Aerospace Exploration Agency, Tsukuba-shi, 305-8505 Japan), and Kazuyuki HIROSE, Nonmember (Institute of Space and Astronautical Science, Japan Aerospace Exploration Agency, Sagamihara-shi, 252-5210 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.108 No.6 pp.500-507 2025年6月

©2025 電子情報通信学会


本会誌では,用語は①文部省(文部科学省)学術用語集電気工学編,②本会編の改訂電子情報通信用語辞典,③本会編のエンサイクロペディアハンドブック,に基づき統一している.

本稿中の「小型」「大型」は,上記に従うと「小形」「大形」であるが,本稿では著者の希望により「小型」「大型」と記述する.

Abstract

 地球周回衛星を利用した高速通信網や合成開口レーダ衛星に代表されるような高精度地球観測の需要が高まるに従い,宇宙機に搭載される電子部品に対しては更なる高性能・高機能化が求められている.一方,厳しい宇宙環境でも“壊れない”信頼性の確保は欠かせない状況が続いている.本稿では,中核となるディジタル計算機部品の宇宙環境下で求められる信頼性について述べるとともに,我々が開発した「高性能・高機能」と「高信頼性」を両立した宇宙用MPU: SOISOC4について紹介する.

キーワード:衛星,MPU,放射線,ソフトエラー,信頼性

1.は じ め に

 2020年代に入り小型宇宙機を利用したコンステレーション事業など,本格的な宇宙空間の産業化に向けて宇宙機開発の裾野も拡大している.宇宙機に求められる寿命やライフサイクルも数か月から数年と短いケースが増えてきており,安価かつ高性能な民生部品(COTS: Commercial-Off-The-Shelf部品)が採用される機会も多くなった.一方,本稿で紹介する宇宙用MPU(用語)(図1)は,高い信頼性と長寿命が求められる大型宇宙機や静止衛星,深宇宙探査機等への使用を想定し,信頼性確保のためにCOTS部品にはない宇宙特有の考え方や技術を適用している.宇宙機を支える電子部品が“壊れない”ことは,軌道上サービスの維持やその先にある本格的な宇宙の産業化には欠かせない要素であることから,紹介する信頼性確保への取組みは,寿命やライフサイクルの短い宇宙機開発にも,参考にして頂けると考えた.なお,本稿における“壊れる”とは,永久的な故障だけでなく,特に宇宙で問題となる誤動作等の現象も含めて説明する.

図1 宇宙用MPU: SOISOC4の外観  チップサイズは12.4mm角,572pin宇宙用セラミックパッケージ.


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