小特集 3. 先進民生部品による高性能・高信頼性衛星機器の開発

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宇宙で使っても壊れないハードウェア開発の最前線

小特集 3.

先進民生部品による高性能・高信頼性衛星機器の開発

The Development Method of High-performance Satellite Equipment Using COTS Parts

矢島雄三 原口英介 谷 重紀 石原秀樹 木之田 博

矢島雄三 三菱電機株式会社情報技術総合研究所

原口英介 正員 三菱電機株式会社情報技術総合研究所

谷 重紀 正員:シニア会員 三菱電機株式会社情報技術総合研究所

石原秀樹 三菱電機株式会社鎌倉製作所

木之田 博 三菱電機株式会社鎌倉製作所

Yuzo YAJIMA, Nonmember, Eisuke HARAGUCHI, Member, Shigenori TANI, Senior Member (Information Technology R&D Center, Mitsubishi Electric Corporation, Kamakura-shi, 247-8501 Japan), Hideki ISHIHARA, and Hiroshi KINODA, Nonmembers (Kamakura Works, Mitsubishi Electric Corporation, Kamakura-shi, 247-8520 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.108 No.6 pp.515-522 2025年6月

©2025 電子情報通信学会

Abstract

 2010年代に始まった本格的な民間ベースの通信コンステレーションに代表されるように,社会インフラとして衛星がなくてはならないものとなった.それと同時に衛星情報を利用したサービスは多様化し,排出量取引等においても利用されるまでになった.サービスの多様化に応じて衛星の性能要求は高くなり,多機能高精度な機器が必要となっている.また,科学観測のみならずインフラ的側面が強くなったことにより,ミッションの中断が大きな社会影響を及ぼすようになってきた.このような時代背景の下,機器開発は高性能かつ高信頼という,相反する設計が必要となっている.高性能な衛星機器開発をラインナップの限られる宇宙用デバイスのみで開発することは困難であり,民生部品の活用が必要となる.本稿では,現在の要求される高性能長寿命を達成するために民生部品を活用した衛星機器の開発動向について解説する.

キーワード:高性能機器開発技術,先進民生部品活用技術,宇宙環境耐性評価技術,長寿命高信頼

1.は じ め に

 2010年代に始まった本格的な民間ベースの通信インフラコンステレーションに代表されるように,社会インフラとして衛星が多用されるようになった.今日では,気象観測(1)や測位(2)など,人工衛星は安心・安全の分野や観測,探査など様々な分野で広く用いられており,人工衛星によるサービスは人類生活の中で欠かせないものになっている.宇宙利用の全体像を図1に示す.更に,宇宙開発はフロンティア領域でもあり,火星や月面の探査などが盛んに行われており,米国主導で月面への人類の輸送が検討されている(3),(4)

図1 宇宙機のアプリケーション

 衛星情報を利用したサービスは多様化(5)し,環境観測(6)や排出量取引等においても利用されるまでになった反面,要求性能は高くなり,多機能高精度な機器が必要となっている(7),(8).また,科学観測のみならずインフラ的側面が強くなった(9)ことにより,ミッション中断が困難になってきた.特に災害利用(10)のような場合では,東日本大震災によって地上通信インフラに甚大な損傷を受け,医療や救援などの行政を中心とした緊急時の通信確保に衛星通信技術が広く利活用される事例もあり,衛星ミッションの利用可否が災害対策の選択肢に直結することから,衛星機器は高い信頼性が求められている.

 このような時代背景の下,機器開発は高性能かつ高信頼という,相反する設計が必要となっている.そこで,COTS(Commercial Of The Shelf)と呼ばれる高機能な民生部品を活用した機器開発が行われる.COTS部品は高機能・高性能化を実現できるが,一般的に環境耐性や信頼性が低い傾向にある.COTS部品を適用した衛星機器開発には宇宙環境や非修理系に対する機器レベル及びシステムレベルの対策が重要であり,ミッション継続性の劇的な向上につながる.本稿では,高性能長寿命を達成するために民生部品を活用した衛星機器の開発動向及び開発方法の事例について解説する.


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