解説 動画像異常検知の最新動向

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 解説 

動画像異常検知の最新動向

Latest Trends in Video Anomaly Detection

橋本慧志 黒川茂莉

橋本慧志 (株)KDDI総合研究所AI部門

黒川茂莉 正員:シニア会員 (株)KDDI総合研究所AI部門

Satoshi HASHIMOTO, Nonmember and Mori KUROKAWA, Senior Member (AI Division, KDDI Research, Inc., Fujimino-shi, 356-8502 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.108 No.6 pp.544-549 2025年6月

©2025 電子情報通信学会

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 動画像異常検知は,監視カメラ,ドラレコ映像を用いた映像解析や点検・監視ソリューションなどに用いられる汎用性の高いAI/機械学習技術である.労働人口の減少に伴い本技術を用いた点検や監視の自動化のニーズはますます高まっていくと考えられる.本稿では,近年の深層学習の発展により大幅な性能改善が進む本技術の全体像及び大規模言語モデルを活用した最新動向について解説する.本技術を体系的に整理し,実利用を踏まえたそれぞれのメリット・デメリットとユースケースについて示す.

キーワード:動画像異常検知,大規模言語モデル,深層学習,映像解析

1.は じ め に

 監視カメラを用いた自動監視,車載カメラを用いた事故検知等,幅広いユースケースが考えられる動画像異常検知(VAD: Video Anomaly Detection)はコンピュータビジョン領域で広範な研究の対象となっている人気の分野である.VADは,図1のように,固定カメラで撮影された監視カメラ映像データセットを用いて学習・評価されることが多い.また応用として,カメラ自身が動く映像,例えば,ドライブレコーダ映像に適用し,交通事故やその予兆を検知するためなどに用いられることもある.この検知結果を運転者にフィードバックすることで,運転支援につなげることもできる.

図1 動画像異常検知の例  定点の監視映像に含まれる動画像を異常検知AIモデルが学習し異常事象を自動で検知する.図に示す異常の例では歩行者の乱闘が含まれる.(※画像出典:ShanghaiTech(5)データセット)

 近年の深層学習(用語)・生成AIのブレークスルーに伴い,VAD分野も急速に進化しており,ますますの発展が期待される.そこで本稿では,VADでよく用いられる学術的なアプローチと応用の事例をまとめる.VAD領域のアプローチは複数存在しその問題設定も複雑であるため,適用するシナリオに従って適切な手法を選択することが重要である.本稿によりVADの手法の体系的な理解が深まるのみならず,各アプローチのメリット・デメリットを把握した上で適切な手法を選択することで実利用における齟齬を減らすことが期待できる.更に最新の動向として,マルチモーダル大規模言語モデル(用語),いわゆる生成AIを用いた異常検知アプローチについても紹介し,その可能性について解説する.


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