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本会選奨規程第17条による最優秀論文賞(第7回)は,下記の論文を選定して贈呈した.
(英文論文誌A 2025年3月号掲載)
量子情報科学の一分野である量子符号理論は,量子計算や量子情報通信といった次世代技術の信頼性を担保するための基礎理論である.特に,量子力学的情報操作を可能にする物理機器を構築する技術は伝統的な半導体技術に比して未熟であることから,量子符号理論は実用的な量子計算機の構築に向けての最重要分野の一つと目されている.
こういった背景から,量子情報科学の爆発的な研究活性化の契機となったその誕生から現在に至るまで,量子符号理論は一貫して急速な発展を続けており,古典的な符号理論の様々な研究成果の輸入にとどまらず,量子情報特有の問題まで活発に研究されてきた.一例を挙げれば,現代的符号理論の代表的成果の一つである疎密度パリティ検査符号は,早い段階から量子情報に対してもその類似が提案されており,量子計算機構築における現実的な要請に応える形へといかに発展させるかが大いに注目されているところである.
しかしながら,古典的な符号理論において基礎的かつ重要な問題が全て,量子情報でも同様に解決に向けて足並みをそろえているわけではない.例えば,情報を意図せず逸失してしまう事象の一つの標準的な理論模型である削除誤りは,古典と量子のいかんを問わず,情報科学において疑いの余地なく基礎的かつ重要であるが,量子情報における削除誤りについては,それが理論的に対処できることの発見ですら,ごく最近のことである.
本論文はこの基礎的な量子削除問題について,その問題背景に始まり,量子削除誤りの理解に必要な最低限度の量子情報理論の知識に加え,主要課題と最新の研究成果から,今後の展望に至るまでを,簡潔かつ丁寧に解説している.このような可読性の高い概説が量子削除の分野において発表されることは大変意義深く,本賞にふさわしいものである.量子削除における先駆者自身の概説である本論文を通して,量子削除誤りの理論が国際的にも活性化することを切に願うものである.
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