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本会選奨規程第20条(電子情報通信分野において,学術,技術,標準化などにおいて特に顕著な貢献が認められ,今後の進歩・発展が期待される)に基づき,下記の2件を選び贈呈した.
没入型映像のための処理・通信技術に関する学際的研究
劉 志君は,2014年に国立総合研究大学院大学/国立情報学研究所にて,博士(情報学)を取得後,日本学術振興会(JSPS)特別研究員,早稲田大学,静岡大学を経て,現在は電気通信大学の准教授として御活躍されている.
同君はこれまで,次世代映像配信に焦点を当て,それぞれの映像形式に対して,映像処理,機械学習,数理最適化など,異なる分野の知識を活用して,利用者が受け取る映像の品質を最大化する研究を行ってきた.特に,新しい球面CNNに基づく高精度なユーザ視点の予測,映像処理を活用した最適なネットワーク伝送方法などの革新的で先端的な研究成果を上げている.これにより,無線・有線ネットワーク上での映像配信サービスの実現に向け,次世代の没入型映像配信技術において多くの貢献をしてきた.また,同君はIoT(‘もの’のインターネット)やエッジコンピューティングといった分野の研究にも積極的に取り組んでおり,これらの技術分野においても顕著な成果を上げている.これらの研究成果は,IEEEやACMの権威あるジャーナルに多数発表され,引用数は6,000回を超え,国際的に高い評価を受けている.
更に,同君は提案した技術の実世界への応用にも注力しており,360度映像のストリーミングシステムなどの実証研究を通じて,社会的にも大きな影響を与えている.これまでに6回IEEE国際会議で最優秀論文賞を受賞し,またIEEE Andrew P. Sage Best Transactions Paper Awardを受賞するなど,その業績は非常に高く評価されている.
以上のように,同君は電子情報通信分野において顕著な貢献をしており,本賞を受賞するにふさわしい候補者であると確信している.今後の更なる研究の進展と御活躍を心から期待している.
H.266/VVCとPCCに関わる研究・標準化・実用化
海野恭平君は,映像符号化及び点群符号化の国際標準方式に関する研究開発・国際標準化・実用化をけん引してきた.ITU-T Q6/16(VCEG)及びISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 5(JVET)において動画像符号化方式の国際標準化に参画し,H.266/VVC(Versatile Video Coding)とH.266.1の規格化に貢献した.また,ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 7(MPEG-3DGH)において,点群符号化方式V-PCC(Video-based Point Cloud Compression)及びG-PCC(Geometry-based Point Cloud Compression)の国際標準化にも参画し,現在はG-PCCの後継規格であるEnhanced G-PCC標準化における活動をけん引している.更に,国際標準規格に準拠したリアルタイムコーデックの開発及び当該コーデックを用いた実証実験を通じて,標準技術の実用化にも貢献している.
同君は,H.266/VVC規格化において,計65件の寄書提案を通じて,画面内予測,画面間予測,及びループ内フィルタに関する必須技術を提案し,客観性能と主観性能の両方の向上に貢献した.また,H.266/VVC対応リアルタイムコーデックの開発とそれに関連するプレスリリース,及び映像情報メディア学会誌における画面間予測に関わる解説記事の執筆・掲載を通じ,H.266/VVCの国内への普及及び若手研究者への知見の共有に貢献した.加えて,H.266/VVCの相互互換性検証規格であるH.266.1に検証用データを提案し,規格成立に貢献した.
更に,同君は,V-PCC及びG-PCCの規格化において,計57件の寄書提案を通じて,V-PCC参照ソフトウェア規格及びG-PCC規格発行に貢献した.加えて,現在標準化が進められているEnhanced G-PCC標準化において,技術トピックごとに設立される探索実験/コア実験の取りまとめ役(コーディネータ),及び規格エディタを担務している.また,映像情報メディア学会誌における点群符号化技術の標準化動向に関わる解説記事の執筆・掲載を通じ,V-PCCやG-PCCの国内の普及に貢献した.更に,建設作業の効率化というユースケースに基づく技術実証として,世界初のG-PCC準拠のコーデックを用いた建設現場からのリアルタイム点群伝送を成功に導き,その実用化をけん引している.
以上,同君が担ってきた一連の研究開発・国際標準化・実用化は,高精細映像や点群などのイマーシブメディアの発展・実用化に向けた重要な技術発展をけん引し,産業界に極めて多大な貢献を果たしたと言える.今後の更なる活躍に期待する.
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